劇場公開日 2001年6月9日

マレーナ : 映画評論・批評

2001年6月1日更新

2001年6月9日より丸の内ピカデリー1ほか全国松竹系にてロードショー

モリコーネのメロディが初恋の回想を切なく奏でる

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トルナトーレには、少年の日の回想がよく似合う。「ニュー・シネマ・パラダイス」にはハマったものの、以後はあまりの後ろ向き加減に辟易させられた彼の感性は、いつまでも特別な存在でありつづける少年時代の想い出にこそぴったりなのだ。しかも、今回は初恋の記憶。戦争に翻弄される愛する女性の悲運を目の当たりにしながら、一歩踏み出す勇気も、声をかける資格もなかった少年のもどかしさが、後ろ向きな感性とあいまって、ひときわせつなさを増すのである。それでいて、性に目覚める年頃の主人公の悶々も、女性客にまで苦笑させるユーモアもいっぱい。おまけに、シチリアの人々 のしたたかな風景には、島国民族日本人にも通じるものも。トルナトーレがひと皮剥けたわけではなく、たんに巡り合わせがよかっただけだろうが、久々にイタリア的叙情に素直に浸れるのは確か。

町の女たちと交わらず、孤立するマレーナの人物設定に違和感はあるものの、演じるモニカ・ベルッチは格別。台詞が極端に少ないので、人形のような美女に映りがちだけれど、それも偶像的なマドンナたるべき計算のうちだろう。実らなかった初恋こそ、生涯最高の恋という主人公と想いを同じくする人なら、思わず抱きしめたくなる一編だ。

杉谷伸子

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