クリムト : 新作映画評論

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クリムト

劇場公開日 2006年10月28日
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クリムト 10月28日よりBunkamuraル・シネマほかにてロードショー

迷宮を彷徨う中で現実と幻想、本物と偽物の境界が消え去る

画像(C) epo-film, Bernhard Berger. All Rights Reserved.

ラウル・ルイス監督の「クリムト」は、グスタフ・クリムトを題材にしているが、この画家の生涯が時系列に沿って描かれるような伝記映画ではない。映画の導入部でクリムトは死の床にあり、彼の脳裏には過去の出来事が奇妙な夢のように甦ってくる。ウィーン社交界の花形としてたくさんの女たちに囲まれるクリムトは、パリ万博で“宿命の女”レアに出会い、クリムトの絵の背景に描かれた死神を想起させる謎の男に導かれるように、美しい女優の幻影に溺れていく。

この映画では、鏡のイメージにルイスのこだわりが表れている。鏡は過去への入口となる。クリムトは、映像作家メリエスが作った偽のニュース映画で最初にレアと出会い、虚構を模倣するように生身のレアと対面する。そしてその晩、ある屋敷で彼女と再会する時には、マジックミラーの向こう側で彼自身がクリムトを演じ、途中で入れ替わる女たちの中にレアという幻影を追い求めている。

鏡のイメージが作り上げる迷宮のなかでは、現実と幻想、本物と偽物が入れ替わり、その境界が消え去り、現実や本物は意味を失う。クリムトは、自己のアイデンティティすら揺らぐ迷宮を彷徨い、本物の解放としての死に至るのだ。

大場正明

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ABOUT THE MOVIE

  • クリムト 画像1
  • クリムト
  • 19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したオーストリアの天才画家グスタフ・クリムトの破天荒な人生を映像化した伝記ドラマ。何に対しても自由奔放なスタイルで通したクリムトが死の床で見る夢と記憶を通して、彼の生きた時代、世界、そして彼自身の愛を描く。監督は「見出された時『失われた時を求めて』より」のラウル・ルイス。主演のクリムトには名優ジョン・マルコビッチ。
  • 原題:
    Klimt
    監督・脚本:
    ラウル・ルイス
    撮影:
    リカルド・アロノビッチ
    美術:
    ルディ・ツェッテル、カタリーナ・ウォッパーマン
    衣装:
    バージット・フッター
    出演:
    ジョン・マルコビッチベロニカ・フェレサフロン・バロウズスティーブン・ディレインニコライ・キンスキー
    製作国:
    2006年イギリス・オーストリア・フランス合作映画
    上映時間:
    1時間37分
    配給:
    メディア・スーツ
  • 10月28日よりBunkamuraル・シネマほかにてロードショー
  • オフィシャルサイト

(C) epo-film, Bernhard Berger.
All Rights Reserved.

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