アメリカン・スプレンダー : 新作映画評論

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アメリカン・スプレンダー

劇場公開日 2004年7月10日
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アメリカン・スプレンダー 7月10日よりヴァージンシネマズ六本木ヒルズほかにてロードショー

ひたすらズレていく視線によって捉えられた世界の姿

画像

主人公のハービー・ピーカーは39年生まれの実在の人物。70年代から自らの生活をネタに、漫画「アメリカン・スプレンダー」の原作を書き続けてきた。この映画はそのピーカーの若き日の物語なのだが、自らがナレーターを務める。つまり、映画においても、漫画と同じく語り手の位置に、彼は収まる。常に自らを語り手でもありその対象でもあるものへと仕立て上げる徹底した距離感が、彼の真骨頂だ。早い話、「おかしな人」なのである。

30歳を過ぎてようやく原作者デビューを果たした彼は、小説や音楽のマニアでSP盤レコードの収集家。当時はまだ十分に珍しかった「オタク」であり、それゆえ当然、社会との関係もズレまくり。そのひたすらズレていく視線によって捉えられた、彼を取り巻く世界の姿が「アメリカン・スプレンダー」である。

映画もまた、そんな彼のズレた視線に倣う。だから映画的な語り口からも文法からもそれは外れ、映画でも漫画でもアニメでもない「アメリカン・スプレンダー」としか言いようのない何かへと、それは姿を変える。映されている固有の場所と時間は、いつでもなくどこでもない場所へと変る。主人公も誰でもない誰かへと変る。そして世界中のどこにでもあるだれもが主人公である物語になるのだ。

樋口泰人

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