ツイン・ピークス : 特集

2003年4月3日更新

91年、TVドラマ「ツイン・ピークス」がWOWOWの放映によって日本に紹介され、瞬く間に熱狂的なファンを生んだ。そして今、WOWOWでは12年ぶりに「ツイン・ピークス」全29話が放映されている。その作者であるデビッド・リンチは現在、インターネットに多大な関心を寄せており、現実と非現実が複雑に絡み合うインターネットの世界こそ「『ツイン・ピークス』の物語構造そのもの」であると語る。10年以上の時を経た今こそ、時代が新たに「ツイン・ピークス」の魅力を読み解く時が来たかもしれない。

デビッド・リンチとインターネット  飯田高誉

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映画「マルホランド・ドライブ」で、ハリウッドの「光と闇の世界」を見事に描写した映画監督デビッド・リンチの自宅スタジオ(ハリウッド)を訪ねて、リンチ自ら開設したインターネットのホームページのことや、日本で12年ぶりに放映されるテレビドラマ「ツイン・ピークス」について語ってもらった。5年ぶりに再会したリンチは、相変わらずシャツの第一ボタンを締め、ジャケットの肘に穴が空いていた。履き古した黒い革靴には、絵の具が付着しており、今でも絵画を描き続けていることが容易に推察できる。

リンチは、見えざるネットワークを形成できる「インターネット」の構造に現在相当ハマッており、自らのホームページもかなり充実し多くのプログラムを制作したとのことである。現在WOWOWで放映中の12年ぶりに甦るテレビドラマ「ツイン・ピークス」の物語構造は、「まさにインターネットそのもの」と語り、続けて「インターネットは、未知の多くの人々と接続し、繋がっており、一つのことが別のことに繋がっているのが特徴だ。だから続き物の作品にはうってつけで、隠された物、そしてミステリーへの導入は自由自在に行うことができる」と話す。複雑な人間関係によって謎が連続的に増殖する様を描写する「ツイン・ピークス」とネットのシステムとを比較しながら、「このドラマの新しさが現代に甦ることを歓迎したい」と語る。「『ツイン・ピークス』を最大に楽しむためにはパイロット版を最初に見て、順番にシリーズを追いながら見てほしいね。できれば部屋を暗くして、静かに邪魔されないように集中して見てほしい。そして、くれぐれも用心しながら見ることだ……」と意味深長な言葉を付け加えながら、同時代的にツイン・ピークス体験されていない日本の若い世代や“追体験”を望んでいるファンに対してメッセージをリンチ自ら発した。また、続けて「登場する人物たちの多重人格性やそれぞれの隠された人間関係をテーマにしている『ツイン・ピークス』は、現代のインターネットの構造と似ているのかもしれない。

DAVIDLYNCH.COM
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つまり、見ず知らずの人々がいつでもアクセスし、隠されている多様な情報を人々が共有することによって目に見えないネットワークが自ずと形成され、その結果、様々なイメージが重層的に潜在していくシステムそのものにミステリーを感じるんだ。“デビッド・リンチ・ドット・コム”という僕のホーム・ページでは、『ダム・ランド』と『ラビット』という私のドローイングに基づいたアニメが見られるんだ。人間のある種の心の闇ともいうべき、読解できない不条理性を象徴しているのかもしれない。また、チャット・ルームでは、様々な出会いがあり、結婚したカップルまでいるんだ」と嬉しそうに語り、続けて「だから、今、インターネットのインフラがかなり整備された日本で『ツイン・ピークス』が再映される意味はかなりあると思う。なぜなら、今だからこのドラマが秘めていた神秘性の深さが認識され、堪能してもらえるから。私は、インターネットのこの階層的な構造にたいへん興味があるんだ。あたかも神秘の森に入っていくスリリングな感覚を体験できる」と目が輝かして語る。

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