劇場公開日 2005年12月23日

ジョージ・マイケル 素顔の告白 : 特集

2005年12月20日更新

最近では日本でもゲイであることを売りにした芸人が現れるなど、固有名詞としては一般化しているものの、まだまだ“ゲイ”社会的に表に出てくることがない。しかし、西欧文化の賜物たる映画や音楽の世界は、ゲイ・カルチャーを抜きに語ることはできないのだ。(文・構成:わたなべりんたろう)

80年代の音楽を扱った2本のゲイが主題の映画~「ジョージ・マイケル/素顔の告白」

「ジョージ・マイケル/素顔の告白」
「ジョージ・マイケル/素顔の告白」

アメリカやイギリスの最近の映画シーンや音楽シーンでのゲイ・カルチャーの要素は日本では考えられないほど一般的に浸透してきている。そのことが明確に分かるのが、イギリスで16歳以上の同性カップルに異性間夫婦と同等の権利を認めるシビル・パートナーシップ法が12月21日に施行されることである。イギリス政府は、法律の施行を受け、今後5年間で2万2000組の 同性カップルが“結婚”すると見込んでいるという。

そんなタイミングでゲイ及びゲイ・カルチャーを扱った映画がこの12月に日本で2本公開される。共に80年代の音楽を扱った映画でもあり、共通点はイギリスのミュージシャンを扱った映画であることだ。その二人とはジョージ・マイケルとボーイ・ジョージである。 映画は前者は「ジョージ・マイケル/素顔の告白」、後者は「TABOO」である。そして2人とも最近になって、世界的に話題を提出した。ジョージ・マイケルは映画の中でも出てくる最愛の人であるマーク・ゴスと結婚(シビル・パートナーシップ法に基づき、夫婦同様のパートナーとなる。夫婦間の「結婚」とは異なる。エルトン・ジョンも同様)、ボーイ・ジョージはドラッグ所持で逮捕である。ただ、違う点もあって、「ジョージ・マイケル/素顔の告白」はドキュメンタリーで、「TABOO」は舞台を撮影した作品である。

本作のプロモーションで来日した ジョージ・マイケル
本作のプロモーションで来日した ジョージ・マイケル

まずは「ジョージ・マイケル/素顔の告白」から触れるとワム!のメンバーとして成功しながらも、本人曰く「カラフルなホットパンツを穿いて、バカっぽく見せかけて才能がないように偽っていた」とのことである。ワム!はファーストシングルがいち早くラップを取り入れた「ワム・ラップ!」だったし、分かる人には一癖あるヤツだと既に分かっていただろう。グループ解散後の87年末発売のソロは、翌年にアメリカを始め世界的にシングル、アルバム共に大ヒットして88年を代表するポップスターになるが、この後に宣伝方法や契約内容などでソニー・ミュージックと対立し長期の法廷闘争、ロサンゼルスの公衆トイレの猥褻行為での逮捕、ブッシュ批判に伴う非難などトラブル続きの90年代以降の出来事が本人及び関係者(当時のソニー・ミュージックの社長を含む)から語られるのは興味深いし、何よりとても面白い。ドキュメンタリーというのは苦難があればあるほど面白くなるものだが、この作品には、その要素が全編に溢れている。今年屈指の音楽ドキュメンタリーの1本だった「メタリカ/真実の瞬間」にも匹敵する傑作ドキュメンタリーになっている。なお、ボーイ・ジョージが出てきて皮肉なことばかり言うのも興味深い。

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