クラッシュ : ポール・ハギス監督インタビュー

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クラッシュ

劇場公開日 2006年2月11日
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クラッシュ

70年代から数々のTVシリーズの脚本を手がけ、昨年のオスカー受賞作「ミリオンダラー・ベイビー」の脚本家として一躍脚光を浴びたポール・ハギスが、監督デビュー作として作り上げた群像劇「クラッシュ」。ロサンゼルスを舞台に、貧困、人種問題などを絡めつつ人間の心を真摯に見つめた本作について、監督に語ってもらった。(聞き手:木村満里子

ポール・ハギス監督インタビュー
「物語を頭で追うのではなく、心で感じてほしかった」

「ミリオンダラー・ベイビー」と本作とで一躍注目の脚本家・監督となったポール・ハギスPhoto by Kaori Suzuki「ミリオンダラー・ベイビー」と本作とで
一躍注目の脚本家・監督となったポール・ハギス
Photo by Kaori Suzuki

──緻密に計算された群像劇で、各エピソードが絶妙に交錯していて面白かったのですが、登場人物の背景は何の説明もないため、イラン人は頑固などと人種的偏見、誤解を招く恐れがあります。彼らがそんな人物になった理由を、観客自身に考えて欲しかったのでしょうか。

「確かにすごく危険な作り方だと思うし、悩んだよ。でも登場人物をありきたりの見方で簡単に判断することによって、物語が進んでそれぞれの人間像がゆっくり見え始めた時に、自分の先入観に居心地の悪さを感じて欲しかったんだ。差別ジョークで思わず笑った後に、背筋がヒヤリとして欲しかった。だからキャスティングも、観ている人の先入観を利用して、あれっと思うようなものにしたんだ」

──人種間の誤解だけでなく、親子や夫婦間の心の行き違いまで描いたことで、社会派映画ではなく、信頼も思いやりも人種ではなく人間同士の問題だというヒューマン・ドラマになりましたね。

「単に人種差別、人間の不寛容を扱うのであれば、ドキュメンタリーとして作る方が良いからね。人は皆、他人をあまりにも表面的に判断し、平気で厳しく批判しすぎる。その一方で自分のことは複雑な人間だと思い込み、様々な愚行を正当化しようとする。それが我々の人生にどんな影響を及ぼしているのか、人間らしく生きるために何を強いられているのか、そういったことを描きたかったんだ」

階級、人種格差といった社会問題を描きながらヒューマンドラマとしても機能する階級、人種格差といった社会問題を描きながら
ヒューマンドラマとしても機能する

──思いやりも与えるだけではコミュニケーションは取れない、受け取る方の勇気も大切だと、ドン・チードルの優しさに気づかない母親や弟を見て感じました。

「家族でさえも簡単に相手を決めつけてしまうことを描きたかったんだけれど、そこまで深く考えていなかったな。ちょっと待って……(暫し沈黙)。うん、確かに! 思いやる気持ちは与えるだけでなく受け取る方もすごく大切だ。そう描かれていたなら嬉しいな」

──そんな風に後で意味を発見していくタイプなのですか?

「脚本は本能的に書いているから、後になって書いた意図を理解することが多いね。例えば車が燃えるシーン。パワフルなインパクトを持つ事も、非常にエモーショナルな強さを持つ事もわかっていたけれど、なぜあのシーンを書いたのか、書いた時にはわからなかった」

“透明マント”の御伽噺が鍵となる父娘“透明マント”の御伽噺が鍵となる父娘

──では魔法のマントについては? 群像劇では各エピソードを結ぶ鍵が重要ですが、ここでは父親が幼い娘に聞かせる魔法のマントの話がすべてを結ぶ鍵になっています。なぜならそれは、信頼することで初めて見える透明のマントなのですから。

「それも後でわかった(笑)。なぜ魔法のマントの御伽噺なんだ!?って書いた後に随分考えて、ようやく信頼というキーワードを見つけて、ラストシーンにつなげたよ」

──そして魔法が奇跡を起こします。ラストは秀逸なのですが、そこに至るまでのミステリーが多すぎて、途中迷子になってしまいました。

「何かが起こっている真っただ中に、観客を何の説明もなく引っ張り込んでしまうからね。でもそれは、意図的に観客をオフバランス状態にしておくためだったんだ。物語についていけなくていい、映画の中のひとりになって、頭でなく心で感じてほしかった。面白かったと言われる映画ではなく、強く何かを感じて、その感情について誰かと話したいと思ってくれたなら、この映画は成功したと言えるね」

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ABOUT THE MOVIE

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  • クラッシュ
  • 「ミリオンダラー・ベイビー」の製作・脚本でアカデミー賞にノミネートされたTV界のベテラン、ポール・ハギスの監督デビュー作。現代のロサンゼルスを舞台に、黒人刑事、ベテラン警官、新進政治家、TV演出家、雑貨店主人などさまざまな階層、さまざまな人種の人々の生活が交錯していく。先日発表されたアカデミー賞では作品賞、監督賞、助演男優賞(マット・ディロン)、オリジナル脚本賞、編集賞、音楽賞の6部門にノミネート。
  • 原題:
    Crash
    監督:
    ポール・ハギス
    脚本:
    ポール・ハギス、ボビー・モレスコ
    製作:
    ポール・ハギス、ボビー・モレスコ、キャシー・シュルマン、ドン・チードル、ボブ・ヤーリ
    撮影:
    J・マイケル・ミューロー
    音楽:
    マーク・アイシャム
    出演:
    サンドラ・ブロック、ドン・チードル、マット・ディロン、ブレンダン・フレイザー、テレンス・ハワード、クリス・“リュダクリス”・ブリッジス、タンディ・ニュートン、ライアン・フィリップ、ノーナ・ゲイ、マイケル・ペーニャ
    製作国:
    2005年アメリカ映画
    上映時間:
    1時間52分
    配給:
    ムービーアイ
  • 2月11日よりシャンテシネほかにてロードショー
  • オフィシャルサイト

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