クラッシュ : 新作映画評論

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クラッシュ

劇場公開日 2006年2月11日
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クラッシュ 2月11日よりシャンテシネほかにてロードショー

「誰かと触れ合いたい」と願い、懸命に生きる人々の心の叫び

画像

車社会でさまざまな人種の混じり合う、ロサンゼルス。人種的偏見が横行し、人間同士が触れ合うことの難しいこの街で起こる、人間ドラマの連鎖。その静かなパワー、綿密さ、多様性と深さに圧倒され、しばらく椅子から立てないほどノックアウトされてしまった。ハギスの脚本と演出は天才的。うまい映画には技巧が際だつあまり、感動より感心の勝ってしまう映画もあるが、これは違う。心に触れる瞬間が、何度となく繰り返されるのだ。

主人公は人種も階級も違う、10数人の人間たち。同じ時間、同じ都会に生きる彼らが偶然のきっかけでぶつかり合って感情を交わし、人生を交差させていく。目を背けたくなるような醜さや憎しみを容赦なく描き、皮肉な運命も示される一方、奇跡のような美しさが迸る瞬間もある。断片的なエピソードを積み重ねながらすべてを収束し、これほどの人間洞察と人生の機微を盛り込んでしまえるとは!

差別や偏見がひとつのテーマだが、そんな簡単な映画じゃない。そこに鮮烈に描き出されるのは、一見しただけでは計り知れない「人間」の姿。すさまじい誤解に晒されながら、「誰かと触れ合いたい」と願い懸命に生きる人々の、心の叫び。希望を感じさせるラストの余韻が、監督の愛情深さを物語っている。

若林ゆり

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