劇場公開日 2001年3月17日

ブラックボード 背負う人 : 映画評論・批評

2001年2月15日更新

2001年3月17日よりテアトル池袋ほかにてロードショー

20歳の女性監督が雄々しく描く“戦争の爪痕”

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イラン映画界の重鎮モフセンの娘、サミラ・マフマルバフの「りんご」に続く長編第2作目。この作品で彼女は、20歳という若さで2000年カンヌ映画祭の審査委員賞を最年少で受賞した。今回のサミラは前作のファンタジックな味わいから一転、戦時下の国境で生きる少年・成人・老人という3つの異なった世代を、「黒板」という主役を据えることによって触れ合っていく姿を描いている。しかし、その描き方は女性監督とは思えないほど厳しく荒々しい。イ=イ戦争が生んだものは、周囲の声も聞かず死を懸けて故郷に帰る老人たちの、文字通り地を這うような道行きや、親を亡くし地雷に怯えながらもヤミ物資の密輸に血道を上げる荒廃した少年たちだ。そんな彼らの閉塞した心を解きほぐすのは、「人々に教育を!」と黒板を背負い旅をする先生たちの熱き思いだ。実話をベースにしたとはいえ、ともすれば唐突すぎる教師たちのたたずまいは、ある種のファンタジーに過ぎないかも知れない。しかし、過酷な状況下だからこそ「信じてみたい」と思わせる説得力を持っているのが「黒板」の存在なのだ。砂にまみれ真っ二つに割られながらも物言わぬ黒板は、そこに書かれたメッセージがあってこそドラマティックな役割を果たす。そう、その劇的な瞬間は映画の最後の一コマに待ち受けている。

(編集部)

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