インドネシアより(1) シネコン全盛!上映作品から見えてくる普段着のインドネシア : 21世紀的亜細亜電影事情

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コラム:21世紀的亜細亜電影事情 - 第16回

2015年3月11日更新

第16回:インドネシアより(1) シネコン全盛!上映作品から見えてくる普段着のインドネシア

東南アジアの大国インドネシア。世界最大のイスラム教徒人口を抱える国の人々は、どんな映画を見ているのだろう? 筆者は現在、首都ジャカルタ近郊の中規模都市に長期滞在している。今回からインドネシアの映画事情をお送りしたい。

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町一番のショッピングモールに行ってみた。ブランドショップやレストランが入ったビルの最上階に、インドネシアの大手シネマコンプレックス・チェーン「Cineplex 21」があった。入り口や売店、劇場内は日本のシネコンとまったく変わらない。上映作品はハリウッド大作や地元のインドネシア映画、タイの映画など。チケットは平日が3万5000ルピア(約330円)、土日は5万ルピア(約470円)だ。インドネシアもシネコン全盛で、中規模以上の都市ならたいていある。

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まずは地元の作品を観てみる。インドネシア映画は日本の映画祭でもよく紹介されるが、文芸作品や独立系の作品が多い。しかしこの日かかっていたのは、バレンタインデー狙いの恋愛映画2本。高校生の恋愛物「This Is Cinta(これが愛だ)」、ラブコメディー「Kapan Kawin?(いつ結婚するの?)」だった。ポスターを見る限り、いかにも「コテコテ」な作品にみえる。

若手俳優二人が主演の「This Is Cinta」。身分違いの幼なじみが、純愛を貫く青春映画だ。舞台はジャカルタ。小学生のファレル(ショーン・エイドリアン)は、隣に住むかわいい女の子レイチェル(ユキ・カトー)と幼なじみ。ファレルは母子家庭に育ったが、母の愛に包まれ幸せに暮らしている。しかし、レイチェルの母は二人が仲良く遊ぶのを快く思わない。一家は父の仕事の関係で、突然ニュージーランドに引っ越してしまう。

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12年後。ジャカルタに戻ったレイチェルはファレルと再会。二人はひかれ合うようになるが、やはりレイチェルの母が壁になる。なんとか二人を引き離そうとするが、反対されるほど二人の愛は深まっていく──というお話。シンプルな恋愛映画だが、物語の端々からインドネシア事情が見えて興味深い。

たとえばニュージーランド。美しい山と緑、草原を吹き渡るさわやかな風。裕福なレイチェルの家族が引っ越し、いつか二人で行くことを夢見る憧れの場所として描かれる。ジャカルタでの暮らしぶりも興味深い。レイチェルの家族は運転手付きの高級車に乗っているが、ファレルは母とバイクに二人乗り。レイチェルの家には外国製のモダンな家具がそろっている。

レイチェルを演じたユキ・カトーは父が日本人、母がインドネシア人。地元では人気の若手女優だ。客席を見渡すと、主演二人と同世代の子どもたちばかり。ジルバブ(イスラム女性がかぶるスカーフ)を着けた女子高生のグループが一喜一憂していたり、カップルがポップコーンを分けあっていたり。映画はめでたしめでたしのハッピーエンドで、みな満足そうに会場を出て行った。

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もう1本の「Kapan Kawin?」は、平たくいえば“アラサー女性の婚活奮闘記”。主人公はジャカルタの高級ホテルの敏腕マネジャー、ディンダ(アディニア・ウィラスティ)、33歳。故郷の古都ジョグジャカルタの母から、常に「いつ結婚するの?」と急かされている。困ったディンダは女友達に相談。売れない俳優のサトリオ(レザ・ラハディアン)に恋人のふりをしてもらい、実家に連れて帰ることに。家族や親せきに紹介することで、事態を収めようとするが──。

「仕事か恋か」で悩む年ごろの女性は、ハリウッドでも繰り返し描かれてきたテーマだ。しかし舞台はインドネシア。やはり現地事情が垣間見える。京都と姉妹都市でもあるジョグジャカルタは、インドネシアを代表する古都だ。王宮があり、伝統文化が息づき、古きよきジャワの文化が色濃く残る。都会ではりつめていたディンダの心は、古里の空気に癒されていく。夕暮れ時、二人がそぞろ歩く繁華街のマリオボロ通り。地元の人たちが訪れる美しい海辺。両親が話す柔らかいジャワ語の響き。ちょっとした観光案内にもなっている。

典型的な二つの恋愛物語は、日本と同じといえば同じ、違うといえば違う。なによりインドネシアの日常生活、人々の悩みや喜び、夢が見えて興味深かった。日本にはまず紹介されない娯楽作品だが、普段着のインドネシアを知るにはうってつけではないだろうか。

[筆者紹介]

遠海安

遠海安(とおみ・あん)。全国紙記者を経てフリー。インドネシア(ジャカルタ)2年、マレーシア(クアラルンプール)2年、中国広州・香港・台湾で計3年在住。中国語・インドネシア(マレー)語・スワヒリ語・英語使い。「映画の森」主宰。

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