名画座や二番館はキュレーターだ : メイキング・オブ・ミニシアター

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コラム:メイキング・オブ・ミニシアター - 第2回

2014年7月14日更新

第2回:名画座や二番館はキュレーターだ

人口減少期に入っているこの日本ですが、なぜか反比例するように映画の公開作品本数は増えているんです。映画に限らず、あらゆるコンテンツが量産されているご時世です。デジタルとインターネットの最大の功績はやはり万人に表現の場を開いたことにあると思います。情報を上手に取得できれば、素晴らしい作品にであう機会は以前より飛躍的に増えています。

しかし、コンテンツが多すぎて、頭がパンクしそうになることもしばしば。消費する側にとっては選択肢の増大じたいはいいことですが、増えすぎて自分にあった作品を探す労力もハンパない、そんな時代に突入してしまいました。

映画業界も例外ではなく、公開本数が年々増加傾向にあります。2013年には初めて公開本数が1000本を突破しました。映画好きからすると嬉しい悲鳴を上げるべきなのでしょうか、財布がどんどん軽くなっていくことを絶望すべきなのか、よくわからない状況ですね。1日3本ペースで見ていかないと全部見切れませんし。いつ仕事に行けばいいのやら。

そんな状況でどうやって面白い映画を選んだらいいんでしょう。情報量が多すぎて逆に判断できなくて、かえって足が映画館から遠のく、なんて人もいそうです。

高校時代はぴあを片手に都内で公開された映画は全部見てやるんだ! と息巻いてた時期が僕にもありましたが、今僕が高校生であっても同じ熱意を持てるのかどうか。公開リストの膨大さに絶望してしまうかもしれません。

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現代のメディア業界でも過剰に溢れた情報をどう整理して届けるのか、というのが課題としてあります。キュレーションという概念がIT用語として定着しましたが、本来は博物館や図書館などの資料の鑑定や研究を行い見やすく整理することを指します。英語でcurateとは展示会を開催するという意味でも使われます。現代美術の世界では、キュレーターのポジションは非常に重要で、テーマを考え、作品を選択して、どう展示するかまで考えます。同じ作品であっても、どのようなテーマで展示されたかによって見え方が全く異なります。一見なんの変哲のない作品でも、テーマと効果的な展示の仕方によっては、作品の印象は全く変わります。

年間の公開本数が1000本を超えてしまう時代になった今、映画業界にもキュレーターが求められていると思います。名画座とか二番館というのは映画の世界のキュレーターのような存在だと思うんです。膨大な公開作品、過去のアーカイブスから、テーマに沿ってセレクトし、良質な作品を新鮮な視点で届けるような存在が。

「この時期のこの2作をチョイスした早稲田松竹の意図はなんだろう」とか頼まれもしないのに考えているときがあります。結果新しい発見があったりするんです。

おりしも先日、そんな独特の視点を味わえる名画座「新橋文化劇場」が閉館を発表しました。少し前には三軒茶屋シネマも閉館を発表しました。何を上映してるか知らなくても、新橋ガード下に行けば素晴らしい映画が見られる、という安心感があそこにはありました。

閉館が発表された翌日に新橋文化劇場に行って来たのですが、上映作品は「チャップリンの独裁者」と「死刑執行人もまた死す」。今このチョイス、というだけで何かを訴えかけているような気がします。そのメッセージが好きか嫌いかは別として、選んだ作品だけで、なにかを伝えることができるのは、まさしくキュレーターの仕事そのものだと思います。(「死刑執行人もまた死す」のラスト、The Endじゃなく、Not The Endなんですよね。このタイミングでこの劇場でそのラストは絶妙に心に響く!)それができるからこそ、新橋文化劇場さんは長い間支持され続けたのでしょう。長年の素晴らしいセレクションからくる信頼感は、JRの列車のガタンゴトンという音すら、館特有の効果音として味方につけている感すらあります。

オープンしてまだ2カ月たらずの当館にそこまでの存在感はまだないかもしれませんが、先達の偉大な背中に少しでも追いつきたいものです。コンテンツ激増の時代だからこそ、選択眼を持った名画座や二番館は必要とされる存在になれるはずです。

[筆者紹介]

杉本穂高

杉本穂高(すぎもと・ほたか)。アミューあつぎ映画.comシネマ副支配人。中学時代部活を引退したあと、ヒマを持て余して映画にハマる。高校時代は学校にいるより、映画館にいる時間の方が長かった。ハリウッド映画も日本映画もヨーロッパ映画もアジア映画も古典も実験映画もアニメも何でも好き。

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