コラム:清水節のメディア・シンクタンク - 第8回

2014年7月25日更新

清水節のメディア・シンクタンク

第8回:「GODZILLA」VFX徹底解明! ギャレス監督“着ぐるみ愛”を激白!!

■バンクーバーとロンドンのVFX工房へ発注

デビュー作「モンスターズ」はVFXショットが250、クルーが4人。それが「GODZILLA」ではVFXショットが960、クルーは500人という規模へと拡大。ビジョンだけではなく采配能力が問われる。

「ワーナー・ブラザースの裏庭スペースの一角の建物を利用して、1階にVFXを、2階に編集を行うチームを置きました。毎朝そこに集まり、ジム・ライジールジョン・ダイクストラと共に100~120ショットを観て、意見をフィードバックするディスカッションを3~5時間行い、スタッフに指示を出す。午後は2階に上がって編集を続けました」

VFX作業はカナダとイギリスの2つの工房に発注された。バンクーバーのモーション・ピクチャー・カンパニーはクリエイティブな作業担当。ロンドンのダブルネガティブ社はショット内の補正などを担当した。

「午前ミーティングの後に、VFXスタッフのリーダーたちは自社に発注するわけです。『モンスターズ』では独りでやっていた作業なので、他人に任せるのは不思議な感覚。テキストでEメールを送る代わりに、フォトショップで色を変えたりシャドーをかけるなどした画像を送って、イメージを伝えることはしましたけれど」

■最新式キャメラに70年代のレンズを装着

画像1

今回使用されたキャメラは、ARRI(アリ)社のALEXA(アレクサ)。「アンナ・カレーニナ」や「アベンジャーズ」などを手掛けた撮影監督シーマス・マッガーベイは、1970年代のCシリーズ・アナモルフィック・レンズを装着した。最新式デジタルキャメラに旧型のレンズを組み合わせることで、どんな効果を狙ったのか。

「デジタルの映像は完璧すぎるところがあるんです。いろいろな情報が入りすぎてしまうので、出来るだけ省いていく作業が重要になってきます。観客に何を見せるのか、光や焦点をコントロールしなければならない。大好きだった70年代ムービーのルックを求めました。『未知との遭遇』で使ったレンズも使用していますよ」

「モンスターズ」で試みたスポーツイベントを追うような自由な手持ち撮影と、キューブリックやスピルバーグのような古典的で安定した撮影をミックスさせることが、本作のスタイルを決定づけたという。

■ブラックバック合成によるリアリティ

VFXスーパーバイザーのライジールによれば、合成用の画面は通常すべてグリーンバックで撮ってしまうところだが、ギャレスは撮影現場において“ブラックバック”で撮ることにこだわるシーンがあった。

「グリーンバックのメリットは1つしかない。人物を切り抜くのが容易になるだけで人工的な素材になってしまう。合成する背景を作る上で助けにはなりません。出来れば完成画面と似たような環境の背景で撮っておきたいんです。ムートーが現れるトレッスル橋のシーンは、ブラックバックで撮影しました。とても暗いシーンでしたが、煙や埃の混じったディテールが感じられ、深みやレイヤーを感じさせる画作りが可能になりました」

では、建物が崩壊する場面で、まるで9・11のワールドトレードセンタービル崩落後の映像で観たような凄まじい埃と粉塵が巻き起こるが、あのような完成画面にもブラックバックは有効なのかと問うと、「あれは、バンクーバーで撮った実写をそのまま使っているショットが結構あるんです」という意外な答えが返ってきた。

>>次のページ:ゴールデンゲートブリッジの周囲は写真合成 

筆者紹介

清水節のコラム

清水節(しみず・たかし)。1962年東京都生まれ。編集者・映画評論家・映画ジャーナリスト・クリエイティブディレクター。日藝映画学科中退後、映像制作会社や編プロ等を経て編集・文筆業。映画誌「PREMIERE」やSF映画誌「STARLOG」等で編集執筆。海外TVシリーズ「GALACTICA/ギャラクティカ」日本上陸を働きかけ、DVD企画制作。著書に「いつかギラギラする日/角川春樹の映画革命」、新潮新書「スター・ウォーズ学」(共著) 。WOWOWのノンフィクション番組「撮影監督ハリー三村のヒロシマ」企画制作でギャラクシー賞、民放連賞最優秀賞、国際エミー賞受賞。

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