リュック・ベッソンが3D映画化! 人気SFコミック原画展覧会がパリで開催 : 佐藤久理子 Paris, je t'aime

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コラム:佐藤久理子 Paris, je t'aime - 第48回

2017年6月29日更新

リュック・ベッソンが3D映画化! 人気SFコミック原画展覧会がパリで開催

パリのシテ科学産業博物館(La Cite des sciences et de l'industrie/ http://www.cite-sciences.fr)で、「ヴァレリアンとロールリーヌ」展が始まった。といっても、日本には翻訳されていないのでピンとこない方もいるかもしれない。リュック・ベッソンの次回作「Valerian et la cite des mille planetes」の原作である、ジャン=クロード・メジエールとピエール・クリスタンの手によるフランスの人気SFコミック、「Valerian et Laureline」のことだ。フランスでは1967年に初めて発表されて以来現在まで続く、宇宙パトロール隊の活躍を描いた長寿人気バンド・デシネ(コミック)であり、「スター・ウォーズ」に大きな影響を与えたとも言われている(メジエールは、ヴァレリアンの世界観やディテールをジョージ・ルーカスが多分に拝借したと批判している。実際両者の共通点は多い)。

とはいえ、現在のヴァレリアンファンはフランスでも30歳以上がメインなので、今回映画公開のタイミングにかけて、原作の魅力をあらためて若い層にもアピールすることが目的のようだ。オープニングには現在ともに78歳のメジエールとクリスタンも駆けつけ、マスコミの取材を受けた。

展覧会では約40点にのぼる原画の展示とともに、メジエール(作画)とクリスタン(脚本)、そしてメジエールの妹で原画に彩色するカラーリストのエブリーヌ・トランレの仕事ぶりをビデオで紹介。また科学産業博物館らしく、天文物理学者、地理学者、古生物学者といった各分野の専門家がそれぞれの視点から、いかにこの作品が興味深く独創的なSFファンタジーであるかを、熱く語っている。

さらに本展を見ると、アーティスティックな点でもこのシリーズがさまざまな文化的引用に溢れた知的なものであることがわかる。さすがはフランスのコミックと言うべきか、構想全体がダーウィンの進化論を下敷きにしているとされ、さらにルネッサンスの絵画や彫刻などの参照、仏の哲学者ガストン・バシュラールや、オーソン・ウェルズをモデルにしたようなキャラクターなど、その目配せは多岐にわたる。ディテールを知れば知るほど楽しみ方も広がるというわけだ。

今回映画化に挑戦したリュック・ベッソンも、もちろん原作の大ファンだという。なんでも子供時代に夢中になり、これをいつかスクリーンで描くということが監督としての彼の原点にあったとか。作品(3D)の規模としても社運を賭けたようなものであるが、それ以上に、これを撮ったら本当に監督を引退してしまうのではと思えるほどの個人的な思いが詰まった題材のようだ。

彼が映画化に選んだのはシリーズ3作目。タイムマシーンで時空間移動をする宇宙のパトロール隊が、28世紀を舞台に、銀河都市を突如襲った敵と対峙する。もっとも、キャスティングは手垢のついていない選択だけにリスクは大きい。これほどの大作は初めてのデイン・デハーン(ヴァレリアン役)、今回が初の主演作となるスーパーモデルのカーラ・デルビーニュ(ロールリーヌ)、リアーナなど。その脇を、クライブ・オーウェンイーサン・ホークアラン・シャバといったベテランが固める。ベッソンは本作を「アンチマーベルの方式」と語り、昨今の映画界を席巻するアメコミ映画へのライバル心を露わにしている。ベッソンとはすでに「フィフス・エレメント」で美術顧問としてコラボレーションを果たしているメジエールも、今回の映画化について「ハリウッドへのフランスからの回答になるだろう」と語る。

撮影監督は「ニキータ」以降すべてのベッソンの長編を手掛けている盟友ティエリー・アルボガスト、一方音楽は長年組んできたエリック・セラに替わり、初めてアレクサンドル・デプラ(『グランド・ブダペスト・ホテル』『英国王のスピーチ』など)が担当する。すでに露出されているいくつかのトレーラーとベッソンのインタビューから想像するところ、現代社会とのリンクも持たせつつ(多くの異なる種族の共存というテーマなど)、主人公ふたりの淡いロマンスも組み込んだ壮大なファンタジーとなる模様。果たして結果は吉と出るか否か。とにかく、7月26日のフランス公開に向けて目下話題を独占する期待作である。(佐藤久理子)

シテ科学産業博物館(http://www.cite-sciences.fr)

[筆者紹介]

佐藤久理子

佐藤久理子(さとう・くりこ)。佐藤久理子(さとう・くりこ)。パリ在住。編集者を経て、現在フリージャーナリスト。映画だけでなく、ファッション、アート等の分野でも筆を振るう。「CUT」「キネマ旬報」「ふらんす」などでその活躍を披露している。著書に「映画で歩くパリ」(スペースシャワーネットワーク)。

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