70周年を迎えるカンヌ映画祭、コンペには強力な面子が勢ぞろい : 佐藤久理子 Paris, je t'aime

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コラム:佐藤久理子 Paris, je t'aime - 第46回

2017年4月28日更新

70周年を迎えるカンヌ映画祭、コンペには強力な面子が勢ぞろい

5月17日に開幕する今年のカンヌ映画祭は、70周年を迎え例年以上に華やかになりそうだ。4月13日の記者会見で発表になったオフィシャルセレクション(追って数本追加になると言われている)に加え、監督週間、批評家週間のセレクションもそろった。日本からはコンペに河瀬直美の「光」、アウト・オブ・コンペに三池崇史の「無限の住人」、ある視点部門に黒沢清の「散歩する侵略者」、そして新人、若手を紹介する批評家週間に、かつてシネフォンダシオン(学生映画)部門で発表した短編を、キャストも一新して長編に撮り直した平柳敦子の「Oh Lucy!」、シネフォンダシオン部門に井樫彩の「溶ける」が入選した。

画像1 (C)Bronx (Paris). Photo: Claudia Cardinale
(C)Archivio Cameraphoto Epoche/Getty Images
Photo by Archivio Cameraphoto Epoche/Getty Images
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コンペティション部門は、すでにパルムドールを2度獲っているミヒャエル・ハネケを筆頭に、トッド・ヘインズソフィア・コッポラミシェル・アザナビシウスフランソワ・オゾンヨルゴス・ランティモスリン・ラムジーファティ・アキンアンドレイ・ズビャギンツェフポン・ジュノホン・サンスなど強力な面子が勢ぞろい。70周年のせいか、カンヌ同窓生大集合といった趣で、多作のホン・サンスに至ってはスペシャル・スクリーニングにもう1本出品する。あまりに狭き門すぎて、パルムドール受賞歴を持つローラン・カンテや、前作「或る終焉」で脚本賞に輝いたマイケル・フランコのような監督たちの作品が、ある視点に回ったほど。久々なのはバンサン・ランドンを起用し、彫刻家ロダンの伝記を描くジャック・ドワイヨン。またコンペ初参加監督は、ノア・バームバックら4組。オープニング作品には、フランスで同日公開を迎えるアルノー・デプレシャンの「Ismael's Ghosts」(コンペ対象外)が選ばれた。本作でマリオン・コティヤールシャルロット・ゲンズブールらと共演するマチュー・アマルリックは、歌手バルバラ(演じるのは元妻、ジャンヌ・バリバール)を描いた自身の監督作が、ある視点部門のオープニングに決定した。

コンペに初監督作が1本もないのに引き換え、ある視点に7本も並んだのは、バランスを取るためだろう。そのなかでも注目は、「ボーダーライン」の脚本家、テイラー・シェリダンの初監督作「Wild River」か。

スペシャル・スクリーニングには、クロード・ランズマンやレイモン・ドパルドンら大御所監督によるドキュメンタリー作品が目立つ。一方アウトオブコンペには三池監督の他に、ジョン・キャメロン・ミッチェルが70'sロンドンを舞台にしたSFミュージカル、アニエス・バルダが写真家JRと組んだロードムービーという、エキサイティングな企画が揃った。さらに今年は70周年アニバーサリー・イベントもあり、お祭り色が濃厚だ。デヴィッド・リンチの噂の「ツイン・ピークス」新シリーズから2エピソードが披露されるほか、ジェーン・カンピオンのTVシリーズ「Top of the lake: China Girl」、昨年他界したアッバス・キアロスタミの「24 Frames」、今年のサンダンス映画祭で披露されたクリステン・スチュワート監督の短編「Come Swim」、そしてアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの映像インスタレーションが特別に披露される。

監督週間には今年アジア映画がインドネシアから1本のみで、フランスとアメリカから5本ずつ、イタリア3本と、相変わらず欧米に偏っている印象だ。オープニングは4年ぶりの新作となるクレール・ドニの、初のコメディ。他にフィリップ・ガレルアベル・フェラーラ、シャルナス・バルタス、ブリュノ・デュモンら、お馴染みの顔ぶれと並んで初監督作が5本ある。

映画祭のジェネラル・ディレクター、ティエリー・フレモーは記者会見で、カンヌがこれまで通り芸術性のある映画をサポートしていくとともに、現代のビジョンを反映した場であることを強調した。内容的には時勢を反映したポリティカルな作品が多いこと、また技術的にはフィルムよりもデジタル作品が増えており、アマゾンやネットフリックスのような新参業者にも門戸が開かれつつある。たとえばトッド・ヘインズの作品はアマゾン制作であり、ポン・ジュノノア・バームバックはネットフリックス配給なので劇場公開は未定(つまり一般の観客がどういう形で観ることができるかわからない)。こうした作品を入れることに業界内では反発もあるものの、映画祭側としては今後視野に入れていかざるを得ないということだろう。

今年の審査員長は、カンヌのお気に入りながらまだ一度もパルムドールを手にしていない“不遇の監督”ペドロ・アルモドバル。果たしてどんな作品に軍配があがるのか、カンヌ出席7度目の縁起を担ぐ河瀬監督にチャンスはあるか、興奮を禁じ得ない。(佐藤久理子)

[筆者紹介]

佐藤久理子

佐藤久理子(さとう・くりこ)。佐藤久理子(さとう・くりこ)。パリ在住。編集者を経て、現在フリージャーナリスト。映画だけでなく、ファッション、アート等の分野でも筆を振るう。「CUT」「キネマ旬報」「ふらんす」などでその活躍を披露している。著書に「映画で歩くパリ」(スペースシャワーネットワーク)。

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