興行収入30億円という“大きな壁”に立ち向かう映画界 : 大高宏雄の映画カルテ 興行の表と裏

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コラム:大高宏雄の映画カルテ 興行の表と裏 - 第6回

2013年10月22日更新

早くも、2013年の終盤が近づいてきた。月日の経つのは早いという古くからの定番的な物言い以前に、様々な領域で、事象やモノにおける消費の速度がますます速まっているのを痛感する。それもまた、定番か。とする冷ややか対応を超え、その速度に人間はどれだけ耐えられるのかが、今や問われ始めていると言うべきか。映画界も、ことは全く同じで、次から次へと新作の類の洪水で、何が何やらわからなくなっている。映画の現状そのものが、まさに消費されつくされているのである。

シネコンに行けば、映画があふれている。どれを選ぶのか。選ばないのか。選ばれない映画は、いずこへと消えてゆく。待ってくれない。そんな余裕は、どこにも、誰にもないのだ。全く恐ろしい光景である。映画、シネコン、ミニシアター、二番館、名画座。それでも、映画館へ、まっしぐらだ。映画が、あるからである。はじめに、映画ありき。映画に魅せられる。映画は、加速度的に進む消費傾向に耐えられるか。その勝負は、映画興行の重要なテーマでもある。


さて、映画状況のなかの映画興行は、今年も9カ月以上が過ぎ、年間を通してどうなるのかといった会話が交わされるようになった。確か、以前にもそうしたことを言った記憶があるが。その会話のなかから、映画の一断面が見えてくるのは間違いない。


「そして父になる」の大ヒットは偶然ではない

1本の映画から入ろう。大ヒット中の「そして父になる」である。10月9日時点で、興収15億円を超えた。最終で、30億円が視野に入ったという。この大ヒットは偶然ではない。仕掛けられている。仕掛けは、悪いことではない。必然をもぎとる戦略が、行き届いているからである。

画像1 (C)2013「そして父になる」製作委員会

その戦略の一つに、海外映画祭への出品がある。海外映画祭で上映して、あわよくば賞を取って日本のマスコミで取り上げてもらい、知名度を上げ、関心を高める。これも定番であるが、いまだ有効である。「そして父になる」は、それがうまくいった。この海外戦略も偶然ではない。監督の実績の積み重ねの上に成立している。これが仕掛けられる監督は、国内で5人以内だろう。多くはない。だから、この5人(?)に作品が集中する。そのひとり、是枝監督の次回作が、すでに動き始めていると聞く。

そして父になる」が、もし30億円を超えれば、今年の公開作品で言えば、13本目の30億円突破となる。多いか、少ないか。微妙である。昨年は、年間を通して16本。今年は、あと3カ月ほどを残して、推定13本。だから、微妙と言った。ただ、今年はスタジオジブリの宮崎駿アニメがあった。「風立ちぬ」は、120億円を超えるらしい。1本のメガヒットが全体の成績を押し上げ、その作品の存在は、30億円超えが多いか少ないかといった見通しをあっさり相対化させる。ただ、30億円、いや20億円以上の数が多いほうが、全体の興行を見た場合、比較的健全だとは言える。“1本かぶり”は、いい面、悪い面を浮き彫りにする。

全体の興収で見た場合、おそらく前年並みか、若干のアップが見込まれるだろうとは推測できる。あくまで推測ではあるが、ただ問題はその内実である。何がどうなったのか。何が起こっているのか。何が起こらなくなったのか。映画に、映画興行に。顕著な傾向は今、何なのか。

>>次のページ:邦画洋画合わせたアニメの興収シェアは、何と72.6%!

[筆者紹介]

大高宏雄

大高宏雄(映画ジャーナリスト、文化通信社特別編集委員)。
1954年浜松市生まれ。明治大学文学部仏文科卒業後、文化通信社に入社。現在に至る。1992年より日本映画プロフェッショナル大賞を主催。現在、キネマ旬報「大高宏雄のファイト・シネクラブ」、毎日新聞「チャートの裏側」などを連載。著書は「興行価値―商品としての映画論」(鹿砦社)、「仁義なき映画列伝」(鹿砦社)、「映画賞を一人で作った男 日プロ大賞の18年」(愛育社)など多数。

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