「ケンとカズ」小路監督と「イノセント15」甲斐監督。日本映画の次世代を担う2つの才能が描く、すぐそこに在る繊細なリアリティ : メイキング・オブ・クラウドファンディング (2)

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コラム:メイキング・オブ・クラウドファンディング - 第7回

2016年8月2日更新
「イノセント15」 「イノセント15」

■監督から見た、自由に映画を作れる環境とは

大高:お二人のクラウドファンディングについてはどうでしたか?

甲斐:振り返ってみれば、僕は「映画やめよう」という時期も2年くらいあったし、クラウドファンディングという仕組みがなければ金銭的にも本当にきつかったと思います。
 今までは好き勝手撮ってたけど、クラウドファンディングのおかげで今回は自分にとっては初めてのまとまった予算で撮りました。その分、責任も負ってますし、今回は劇場公開という結果に繋がったのは本当に良かったです。そしてやっと監督としてスタートした感じがします。あと、制作体制はそこまで変わってないけど、プロデューサーは今回初めて入りました。それぞれの技術部にほぼ助手がいない現場なのでぼろぼろではありましたが(笑)。ただ「映画の作り方」を覚えることができたので、今後作品を制作する上でも大きな指針となったと思っています。

大高:その姿勢が、「田辺・弁慶映画祭セレクション2016」での特別上映の時にテアトル新宿を埋めた事にもつながっているのかも知れませんね。監督自身が集客にしっかりとコミットされていてとても素晴らしいと思いました。そういえば、上映後のトークショーで、「これからは商業映画以外は撮らない!」と宣言されていましたが、その真意は何だったのでしょうか?

甲斐:はい、今後は、僕の考える、「商業映画」を作り続けたいと思っています。というのは、一番大きいのは自分が用意できるレベルの、低い金額で映画を無理やり作るのが嫌になったのがあるんです。特に、撮影中に「節約しよう」、と思ったり、スタッフさんに十分なお金が払えないのが本当に嫌だ、と思ったんですね。なのでクラウドファンディングで自分が用意できる以外のお金が集まったことは、僕の中で本当に大きな事でした。
 そして次は数千万円単位の、ギリギリ「商業レベル」のお金で自分が撮りたい作品を撮って、お金を出して頂いた人達にキチンと結果で返していく、そんな形で今後は映画を撮って行きたいと思っています。
 ただ、プリプロに時間かけて、キャスティングも有名でも無名でもいい、よければ使う、そんなわがままな環境にしたいので、そこにのっかってくれるところからの資金を探します。まとまったお金を出してくれつつも、好きにやっていいよと言ってくれる企業。あるのか分かりませんし、監督にとっては夢のような話ですけどね(笑)。ただ、その環境を作るべく戦って行きたいと思います。

大高:小路監督は、次回作は商業映画を監督したい、等の想いはお有りですか?

小路:僕は、次は絶対商業、というのはあまりないです。逆に今後、商業・インディペンデント問わずに、監督がある程度自由に映画を制作しようと思った時には、クラウドファンディングは重要な要素になると思っています。今回大きな金額は集まらなかったですが、人に丸投げしてしまったりと反省点もあるので、次回はもっと大きな位置を占めると思います。

大高:クラウドファンディングが映画製作に与えるインパクトという意味では、監督の自由度以外にプリプロにも有ると思ってたりもします。いい映画を撮るのに重要(かもしれない)と思っている点として、プリプロにお金をかけられるか、というのがあると思います。
 商業だとプリプロで時間を掛けた演出ができず、現場で自分とのイメージとのギャップに摩耗していくという話も聞いた事がありますが、通常なかなかお金がつきにくいプリプロ費用をクラウドファンディングを使ってを得ることが出来れば、作品のクオリティを大きく向上出来るかもしれないなと。

小路:それは本当にそうで、プリプロできるとできないので作品の仕上がりに大きな差が出てきます。ハリウッドではリハーサルに3週間はかける、とよく言いますよね。本番の撮影のことを考えると、やったほうが絶対お金の節約になる、それは絶対にそうなんです。なので今回は僕も、3週間時間をかけました。

「ケンとカズ」 「ケンとカズ」

■古典から生み出す新しさを目指して

大高:自分の作品をどんな人に観てもらいたいですか?

甲斐:先日の特別上映では映画好きの人が多かった印象でしたが、劇場公開の際には、普段あまり映画を観ていない人にも観てほしいです。この映画のテーマの一つは、15歳だった全ての人たちが経験した、恋がうまくいかない時のような胸がキュウとする「切なさ」なので、それは皆さん知っている気持ちだと思うんですよね。だから15歳の若い人にも、お子さんがいるような人にも観て欲しいです。今回、自分でチラシを撒いたりなど、集客の為の様々なことに必死になるのは初めてで、これまでは映画作ったらほったらかしのようなものでした。でも今回の経験を通じて、今はまだその努力が必要だと思いました。

小路:僕は自分であまり集客しないのですが、でも自分で手売りすると、その大切さも分かるんですよね。本当にお金を払って、見に来てくれるんだなというのが分かるので、自分で集客をする事の大切さも理解しているつもりです。

甲斐:集客に切羽つまりすぎずに売れるのが一番いいんですよね。かってに転がっていくというか、ムーブメントになるというか。そんな映画に憧れます。今冬のテアトルでの劇場公開も、ざわざわさせたいですね。

大高:今後、こんな映画を作っていきたいというのがあれば教えてください。

甲斐:毎回何かにチャレンジしたい、とは思っています。今度は娯楽映画を撮りたいですね。伊丹十三監督や今村昌平監督みたいなのをやりたいです。人間賛歌でもあり、そして古典になるような映画を撮りたいですね。奇をてらうわけではなく、古びないものこそ新しいと思うので。新しいもの、今しか撮れないものは出てきますけど、ベースにあるのは、人生とは何か、愛とは何かなど、普遍的なテーマだと思ってます。

小路:ベタな話をやりたいです。毎回同じテーマの繰り返しかもしれません。選択、友情、親子の愛とか。次回作は親子愛かな。みんなが共感できるものでも、自分ならうまくできます。奇てらったオチはいらない、ベタなテーマという枠の中でどれだけいいものができるかを試したいんです。(了)

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小路紘史監督 小路紘史監督

「ケンとカズ」

・7月30日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開!

キャスト カトウシンスケ 毎熊克哉
飯島珠奈 藤原季節 高野春樹
江原大介 杉山拓也

監督・脚本・編集  小路紘史

プロデューサー  丸茂日穂 小路紘史

撮影・照明  山本周平
制作 原田康平 本多由美
メイク 俵あずさ
特殊メイク 森田優奈
美術・衣装  尾身千寛
録音  市川千裕 長谷川奈映

特別協賛  東京フィルムセンター映画・俳優専門学校
配給・宣伝  太秦

製作 「ケンとカズ」製作委員会(小路紘史/キッス・エンタテインメント/キューズファミリー/ニチホランド)
【2016年/日本/カラー/アメリカン・ビスタ/ステレオ/96分】
(C)「ケンとカズ」製作委員会

公式サイト www.ken-kazu.com

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甲斐博和監督 甲斐博和監督

「イノセント15」

・今冬 テアトル新宿 レイトショー公開予定

キャスト 小川紗良 萩原利久
山本剛史 本多章一 宮地真緒 影山樹生弥 中村圭太郎 信國輝彦 久保陽香 木村知貴

監督・脚本 甲斐博和

プロデューサー  前信介

撮影/本杉淳悟 (JUMP CINEMA)
照明/伊藤貴哉
録音/内田達也
VE/桜田公一
整音/根本飛鳥
カラリスト/玉田詠空
音楽/岡田太郎 TEYO
助監督/山之内優
制作進行/岩切一空 磯野龍紀
ヘアメイク/MAMI 川元麻衣 蓼沼仁美
スタイリスト/部坂尚吾
スチール/松井良寛

製作/TOCA 2015「INNOCENT 15」製作委員会

公式サイト http://innocent15.toca.tokyo/

[筆者紹介]

大高健志(おおたか・たけし)

大高健志(おおたか・たけし)。国内最大級のクラウドファンディングサイトMotionGalleryを運営。
外資系コンサルティングファーム入社後、東京藝術大学大学院に進学し映画を専攻。映画製作を学ぶ中で、クリエィティブと資金とのより良い関係性の構築の必要性を感じ、2011年にMotionGalleryを立ち上げた。

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