“映画祭だけではもったいない。” 映画『独裁者、古賀。』全国劇場公開へと至る道。 : メイキング・オブ・クラウドファンディング

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コラム:メイキング・オブ・クラウドファンディング - 第4回

2015年10月14日更新

飯塚俊光監督が手掛ける初の長編映画「独裁者、古賀。」は、伊参(いさま)スタジオ映画祭シナリオ大賞を2012年に受賞し、翌年の映画祭でプレミア上映されるために制作された作品。この映画を、一般の映画館でも公開するための費用はクラウドファンディングで調達されたものです。ふだんは上映されない映画を、公開するまでにどのような活動を行ったのか。
 監督の飯塚俊光さん、プロデューサーの露木栄司さんに、劇場公開にこぎつけるまでの話を伺いました。

左から露木栄司プロデューサー、飯塚俊光監督、筆者 左から露木栄司プロデューサー、飯塚俊光監督、筆者

学校ではまず「埋もれない」ことを意識した

大高 今回、「独裁者、古賀。」のプロデューサーを務められた露木さんは、飯塚監督が通われていた映画学校で講師をされていらっしゃるそうですね。

飯塚 もともとは映画学校の先生と学生という関係です。露木さんは通っていたニューシネマワークショップ(NCW)のディレクターをされています。「独裁者、古賀。」のシナリオが伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞2012で大賞に選ばれ、製作資金が提供されることとなり、製作をどうしたものかと思って相談したんです。

露木 NCWはおかげさまでこれまでに映画監督やスタッフ、映画配給宣伝のスタッフを多数輩出しています。「神様のカルテ」の深川栄洋監督や「宇宙兄弟」の森義隆監督、最近だと「死神ターニャ」の塩出太志監督など、現在、映画界で活躍するOBの監督も多いです。そんな中で、飯塚監督をはじめOBの小規模な作品のプロデュースを引き受ける事もあります。

大高 そもそも、飯塚監督が映画の学校に通おうとしたきっかけは何だったのでしょうか?

飯塚 もともとは、映画が好きだったのですが、学生時代は特に映画に携わろうとは考えていなかったんです。ところが、就職して何年かしてから、どうもこの世界は自分には合わないな……と。その時に昔好きだった映画を作ってみたいと、あやふやながら考えるようになりました。映画学校をいくつか検討してみたのですが、その頃、ぴあフィルムフェスティバル(PFF)で「はっこう」(06)でグランプリを取った熊谷まどか監督の存在を知り、この学校に通っていたこと知ったんです。どうせやってみるなら名門がいいだろうと。夜間の授業というのも働いている身分には都合がよかったですし。

大高 映画の世界へと突き動かした作品はどんなものだったのでしょうか?

飯塚 はじめは普通にハリウッド映画です。「ターミネータ2」や「インディペンデンス・デイ」や「ミッション・インポッシブル」がスタートだったんですけど、映画を好きになってくと、やっぱり大作だけじゃ物足りなくなっていくんですよね。そこでクエンティン・タランティーノ監督、ロバート・ロドリゲス監督作品などを見はじめるようになりました。そして、同じ時期に北野武監督が「キッズ・リターン」を作った。これが衝撃的で、そこから邦画にも関心が向かうようになりました。SABU監督のものや、篠原哲雄監督の「洗濯機は俺にまかせろ」とか、少しずつ好きな路線が定まっていってますね。

大高 篠原監督といえば伊参シナリオ大賞の話にもつながって行きますね(笑)。ちなみに、学校に通い制作現場を学んで行く中で、見る映画や好きな映画などに変化があったりしましたか?

飯塚 学校に通い始めて意外だったのは、小津安二郎やジャン=リュック・ゴダールなどの監督作品が好きな方が多かったことですね。自分も嫌いじゃないんですが、「みんなと一緒にこの方向に足を向けると“埋もれる”な」と思ったんです。いかにも王道の、たとえば「アルマゲドン」みたいな作品を志向してみた方が、じつは目立つんじゃないだろうかって考えたんです。なので、変わったといえば変わったんですが、戦略的な理由で変わった。ほかの映画学校も同じだと思うんですが、ニューシネマワークショップって、クラスの中で監督って選抜されるんですよ。全員が監督になれるわけではないんです。

露木 NCWの映画クリエイターコースでは、最初の半年間のクラスで全員が小さな作品をつくるのですが、次の半年間では10人にひとり監督が選ばれ、グループを編成して映画をつくるんです。それに飯塚監督は、3人監督のうちのひとりに選ばれました。飯塚監督の最初のコースの作品は微妙でしたが・・(笑)、次のコースではシナリオが面白かったので選びました。

飯塚 シナリオが選ばれて作った「SEMICONDUCTOR」は、2009年に西東京市民映画祭の自主制作映画コンペティションで入選することができました。

大高 結構激しい競争が入学後にもあるのですね。先ほどお名前が出た塩出監督の作品をクラウドファンディングさせて頂いた時もお話を聞いていて思っていたのですが、NCWは卒業後も、生徒と学校の関係性が続いているというか繋がりをすごく感じているのですが、何か仕組みなどがあるのですか?

露木 OBが所属する「制作部」というのがあります。学校を終了しても継続的に映画作りの経験を積んでいく。そういう「場」を提供し、サポートする事が、OBの活躍につながっているんだと思います。

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「行けよ、千葉。」から「独裁者、古賀。」へ~中編から長編へ

飯塚 その後、2010年に「行けよ、千葉。」という冴えない男子の学園ものの中編を作りました。この作品を非常に好きだと言ってくれている方がいて。自分の作品で熱狂的なファンが現れたのは初めてだったんです。そこで、もしかしたら自分は学園もの、かつさえない人間を描くのが得意なのかもしれない、僕の長所が出せるかもしれないって思ってしまったんですね。それから約1年かけてシナリオを書いて、伊参スタジオ映画祭のシナリオ大賞に応募し、大賞をいただいたんです。

露木 伊参スタジオ映画祭っていうのは、「眠る男」(監督:小栗康平)や「月とキャベツ」(監督:篠原哲雄)の舞台となった群馬県中之条町が主催する映画祭で、2001年から開催されています。シナリオ大賞は、おもしろい仕組みで、大賞受賞者はそのシナリオを伊参を舞台に映画化して、翌年の映画祭でプレミア上映を行うんです。中編の場合、賞金が100万円出るんですが、受賞者はその賞金を制作資金に回します。

大高 実は、私も以前、伊参シナリオ大賞受賞脚本の映画化の為に、現地に制作に行った事があります。宿舎も用意されているし、映画を作るための環境が整っていますよね。もちろん、すでに10年近く続いている映画祭なので、ロケをするにあたって地元の人達の理解や体制が整っていました。何といっても宿泊施設があって制作費がとても助かりました(笑)。

飯塚 自分の時は、撮影時に芸術祭が開催されていた関係で、スタッフは地域の公民館に寝泊まりして、俳優さんたちは近くのホテルに泊まってもらっていました。ロケ地は、伊参にある場所を提供してもらえるので、通常よりもリーズナブルに制作できると思うのですが、100万円ってあっという間になくなるんですね。

露木 全員がボランティアだったらなんとかなるかもしれませんが、出演料などはお支払いしたいですしね。「行けよ、千葉。」も「独裁者、古賀。」もNCW制作部の人たちがボランティアとして参加しています。飯塚監督の同期が多かったですね。いろいろ節約していて、引っ越し用トラックが必要なシーンがあったんですけど、群馬で用意するより東京の方が安いってことで、僕が東京で借りて、群馬と東京を往復したこともありました(笑)。

大高 ただ、伊参シナリオ大賞発の映画作品は、中編・短編だという事もあって、あまり劇場公開までいく作品は少なかったと思います。そういう意味では本作はとても新しいチャレンジでもありますよね。劇場公開はいつごろから意識されていたのですか?

露木 クランクインする前からです。この映画祭で作られる作品はとても良い作品が多いものの、劇場公開されているものがないんです。地域の作品なので、映画祭で何回か上映するだけで目的は達成されているんですよ。

大高 せっかくここまで歴史もあり、たくさんの監督を輩出している映画祭なのに、映画祭に行かない限り見られないなんて非常にもったいないですね。

露木 私も縁が深い映画祭なので、「独裁者、古賀。」が劇場公開される事例ができれば、これから制作される映画にも良い影響を与えられるかもしれないと思ったんです。なので制作段階から劇場公開が出来るように意識していきました。一番の問題は尺です。60分以下だと劇場でなかなか公開させてもらえないんですよ。

飯塚 この前に作った「行けよ、千葉。」は43分だったんだけど、最もよくない中途な尺でした。映画祭としては30分以下で終わるか、60分以上かが求められています。できれば60分ぐらいに伸ばしたかった。

大高 そのあたりのバランスってとても難しいですよね。そうすると、45分程度の話を長編にするとなると、登場人物を足したり、エピソードを足したりすると思うんですが、どのように時間を増やしていったんですか?

飯塚 じつは、特に長編にしようとして話をいじってはまったくないんです。ただ、登場人物に説得力を持たせるためにシナリオに小道具やセリフを足していったら分量がどんどん増えていきまして。ラッキーなことに最終的には79分の作品になりました。25ページだったシナリオが40ページにもなってしまっていました。映画祭のスタッフの方にも製作前に見せることになったんですが、「なんか多くないですか?」って言われてしまいましたね。

露木 でも、そのおかげで劇場公開しやすい尺になりました。なのでラッキーでした。シナリオに厚みをもたせた分、劇中のキービジュアルにもなった新選組のTシャツやストッキングなどの要素が加わった。当初のシナリオでは出てきていない小道具なんです。

大高 ストーリーに厚みを持たせた結果、ビジュアルにも厚みが出てきたんですね。

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[筆者紹介]

大高健志(おおたか・たけし)

大高健志(おおたか・たけし)。国内最大級のクラウドファンディングサイトMotionGalleryを運営。
外資系コンサルティングファーム入社後、東京藝術大学大学院に進学し映画を専攻。映画製作を学ぶ中で、クリエィティブと資金とのより良い関係性の構築の必要性を感じ、2011年にMotionGalleryを立ち上げた。

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