エネルギッシュに活動するM・サトラピ アングレーム漫画祭40周年、アニメは仏映画不況の救世主に? : 佐藤久理子 パリは萌えているか

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コラム:佐藤久理子 パリは萌えているか - 第15回

2013年2月21日更新

エネルギッシュに活動するM・サトラピ アングレーム漫画祭40周年、アニメは仏映画不況の救世主に?

3月23日まで、パリのギャラリー、ジェローム・ドゥ・ノワモンでマルジャン・サトラピの初の絵画展が開催されている。20点以上にわたる最近作のポートレートを集めたもので、その作風は彼女のコミックと共通し、ぱっと見ただけでサトラピとわかるものだ。極端にミニマルなスタイル、それでいて表情に富んだ豊かな表現力、赤などの原色を生かし、どこかオリエンタルな雰囲気を漂わせる。オープニング前夜のパーティには多くの関係者が集まり、賑わいを見せた。

サトラピといえば日本でも、「ペルセポリス」や最近公開された監督作「チキンとプラム あるバイオリン弾き、最後の夢」で知られるが、フランスでは以前からコミック作家として絶大な人気を誇る。昨年は、彼女のファンだというカトリーヌ・ドヌーブをモデルに、パリのデパート、ボン・マルシェの160周年を記念したショーウィンドウのデザインを手がけ、記念限定本も出版した。エネルギッシュな創作欲に溢れるとともに、表に出るのを厭わない性格とその毒舌で、ユニークな本人のキャラ自体が有名になっているところもある。

2月には、そんな彼女が監督・主演を果たしたオリジナル・ライブ・アクション映画「La bande des Jodas」が公開になった。これがまたかなりユニークな作品だ。空港でのスーツケースを取り違えたのがきっかけで出会うヒロインとふたりの男。マフィアと結婚した姉妹が殺され自分も命を狙われているという彼女に同情した男たちが、徐々に彼女のペースにのせられていく。ロード・ムービーでもあり、西部劇へのオマージュを感じさせるところもあり、サトラピ流のシュールな筋立てで荒唐無稽なユーモアが展開する。だが映画自体の完成度はいまいちで、それだけに彼女に興味がないと辛いのが残念なところ。いかにも低予算の、ノリで作りましたという雰囲気だが、サトラピ自身は黒澤明の「七人の侍」を子供の頃から300回以上も観ているという映画通であるから、もう少し練った上で作ったらいいものになったのではないだろうか。

もっとも、彼女の旺盛な好奇心はとどまるところを知らず、次回はなんとハリウッドからのオファーを受け、クライム映画(「The Voices」)を監督する予定とか。現在主演候補にはライアン・レイノルズの名があがっているというから、どんな出来になるのか興味津々だ。ハリウッド進出1作目となるだけに、彼女の個性が生かされることを祈りたい。

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ところで、サトラピも何度も参加しているアングレーム国際漫画祭(1月31日から2月3日)が今年40周年を迎えた。日本でもすでにずいぶん紹介されているが、今回は「ドラゴンボール」などで海外にも人気の高い鳥山明が、40周年記念特別賞を受賞。また松本零士も招待されるなど、日本にとってもことさら馴染み深い年となった。

フランスにおけるマンガ、アニメ人気は相変わらず根強く、この業界だけは不況などどこ吹く風といった趣だ。昨年は5565タイトルが出版され、国内の売り上げは3000万部以上。そのうち(シリーズもの等ではなく)まったく新しいタイトルは4000部以上にのぼり、その数は前年に比べて7%増だという。日本同様、映画界でもマンガのアニメ化、ライブ・アクション化が増えている。フランスの映画業界の不況を救うのも、これからはアニメの果たす役割が大きいかもしれない。
(佐藤久理子)

[筆者紹介]

佐藤久理子

佐藤久理子(さとう・くりこ)。佐藤久理子(さとう・くりこ)。パリ在住。編集者を経て、現在フリージャーナリスト。映画だけでなく、ファッション、アート等の分野でも筆を振るう。「CUT」「キネマ旬報」「ふらんす」などでその活躍を披露している。著書に「映画で歩くパリ」(スペースシャワーネットワーク)。

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