
3月23日(日本時間24日)の授賞式を前にして、すでに今年のアカデミー賞の勝者は決まっている。総ノミネート数40という大記録を打ち立てたインディペンデント・スタジオのミラマックスだ。いや、もっと具体的に言えば、ミラマックスのハーベイ・ワインスタイン会長である。作品賞にノミネートされた5本の作品を見てみればいい。自社作品「シカゴ」「ギャング・オブ・ニューヨーク」に、パラマウントとの共同製作である「めぐりあう時間たち」、さらに、「ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔」にまで名前がクレジットされている(製作はニューライン・シネマだが、かつてミラマックスで映画化準備をしていたことから、ハーベイと弟のボブの名前がエクゼクティブ・プロデューサーとして載っている)。つまり、「戦場のピアニスト」以外の4作品に関わっているということだ。
マーティン・スコセッシ監督ハーベイ・ワインスタインほど、ハリウッドで悪名が高い人もそうはいない。映画祭でインディ映画を買い占めても、お蔵入りにしてしまうことが多いし、フィルムメーカーに無断で再編集してしまう「シザーハンズ」としても知られる。外国の配給会社にはいつも強気で、ろくでもない作品と組み合わせたパッケージ買いを強要し――まあ、これはミラマックスに限ったことではないが――、派手な宣伝活動でアカデミー賞のノミネートをかっさらっていく。その強引な手法は、しばしば騒動を巻き起こし、「ギャング・オブ・ニューヨーク」のマーティン・スコセッシ監督や、「めぐりあう時間たち」の大物プロデューサー、スコット・ルーディンとのけんかは、マスコミを賑わせた。強面でいかにもガキ大将的なルックスと相まって、彼ほど嫌われている人もいないと思う。
そんな彼のインタビュー記事が、このたびエンターテイメント・ウィークリー誌に掲載された。噂やイメージが先行している人だけに、この記事は大変興味深いものだった。
「シカゴ」のレニー・ゼルウィガーハーベイは、やはり豪腕だった。たとえば、「シカゴ」への出演をためらっていたレニー・ゼルウィガーの説得法は、「ブリジット・ジョーンズの日記」に主演させてやった恩を売りつつ――ヘレナ・ボナム=カーターやケイト・ウィンスレットも候補だった――、彼女が熱望していた「コールド・マウンテン」の出演を確約してやったのだという(アンソニー・ミンゲラ監督の反対を押し切った)。
また、今年のアカデミー賞の監督賞は、「ギャング・オブ・ニューヨーク」のマーティン・スコセッシに取らせるために、ミラマックスはキャンペーンを一本化させているという。そのことについては「シカゴ」のロブ・マーシャル監督も納得済みだとか。
タフな商売人らしいエピソード満載のなかで、ぼくが注目したのはたとえばこんなコメントだ。
「たとえ、他人が気に入らなくても、自分が好きな映画は買う」
「損したって、気にするもんか」
もしかして、純粋な映画ファンなのかも。
