「クローバーフィールド」第3弾がNetflixでサプライズ配信!その裏側に見る米映画興行のいま : FROM HOLLYWOOD CAFE

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コラム:FROM HOLLYWOOD CAFE - 第290回

2018年2月9日更新 小西未来

第290回:「クローバーフィールド」第3弾がNetflixでサプライズ配信!その裏側に見る米映画興行のいま

全米で1億人以上が視聴する米NFLスーパーボウル中継では、毎年、期待の大作映画の予告編が放送される。今年も「ハン・ソロ スターウォーズ・ストーリー」や「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」、「ミッション:インポッシブル フォールアウト」など注目作の予告編がお披露目されたが、もっと驚いたのはNetflixの「クローバーフィールド・パラドックス」だった。なにしろ「クローバーフィールド」の第3弾がいきなり正式発表されたばかりか、スーパーボウル中継の終了直後に配信を開始したのだから。

画像1 Netflixオリジナル映画「クローバーフィールド・パラドックス」
全世界同時ストリーミング

振り返れば、第1弾「クローバーフィールド HAKAISHA」(08)は、前年夏に「トランスフォーマー」(07)の上映館で予告編が初披露された。敢えてタイトルを伏せ、ヒットメーカーのJ・J・エイブラムスがプロデューサーであることと、全米公開2008年1月18日という情報しか載せなかったことで、熱狂的な注目を集めた。第2弾「10 クローバーフィールド・レーン」にしても、16年1月に全米公開された「13時間 ベンガジの秘密の兵士」の公開館で予告編を初披露。しかも、全米公開は翌2月だった。つまり、シリーズが進むごとに、予告編の初披露と公開日との間隔が短くなっている。

実は、「クローバーフィールド・パラドックス」は、「ゴッド・パーティクル」という仮題で劇場公開映画として準備が行われてきた作品だ。もともとは17年2月の全米公開予定だったが、その後、同年10月、18年2月、4月と公開日がずれていった。良作ならば、すでに完成している映画の公開を延期する理由はないので、クオリティに難があったことは容易に想像がつく。しかし、製作を手がけた米パラマウントが劇場公開をあっさり諦め、Netflixに同作を売却するとは思わなかった。Netflixの買収金額は5000万ドル程度と言われている。同作の制作費は4000万ドルあまりで、劇場公開に向けた宣伝費をいっさいかけずに済んだパラマウントは、黒字で売り抜けることに成功したのだ。

「クローバーフィールド・パラドックス」場面写真 「クローバーフィールド・パラドックス」場面写真

会員増を狙うNetflixにとって、有名シリーズの最新作を手に入れたことは大きなセールスポイントとなるし、劇場公開作品と違って、同社ユーザーのオリジナル映画への評価は必ずしも厳しくない。ウィル・スミス主演のNetflixオリジナル映画「ブライト」も、映画評論家の評価は芳しくないものの、同社のサービスでは高い人気を誇っている。高い入場料を払わなくてはならない映画興行と、定額制のストリーミングサービスでは、同じ映画を提供しても反応が異なるのは当たり前なのかもしれない。

さらに、「クローバーフィールド・パラドックス」の劇場公開をパラマウントが避けた事実は、いまの全米映画興行の実情を反映していると言える。17年の総興行収益は前年と比較してあまり変わらないが、動員に関しては6%ダウンしており、右下がりが続いている。Netflixやアマゾンなどのストリーミングサービスをはじめ、有料チャンネルやベーシックチャンネルが魅力的なオリジナルコンテンツを大量に生産しているためで、良質なコンテンツになれきった彼らがわざわざ映画館に足を運ぶのは、フランチャイズの超大作映画に限られてきている。だから、「クローバーフィールド・パラドックス」の品質が高かったとしても、現状ではヒットが難しかったのではないかと思う。

実際、「クローバーフィールド」シリーズは、SFパニックという共通点があるものの、異なる作者が異なる物語を描くアンソロジーシリーズとなっている。映画では珍しいスタイルだが、ドラマの世界では「FARGO ファーゴ」や「アメリカン・ホラー・ストーリー」、「フィリップ・K・ディックのエレクトリック・ドリームズ」など良質のアンソロジーシリーズが揃っている。とくに、各話ごとに異なるSFストーリーで構成される「ブラック・ミラー」は出色の出来栄えだ。実は、「クローバーフィールド・パラドックス」で主演を務めるググ・バサ=ローは、「ブラック・ミラー」のシーズン3・第4話「サン・ジュニペロ」に出演している。このエピソードは、個人的には昨年観たどの映画よりも気に入っている。これほど質の高い物語がNetflixにごろごろと転がっているいま、映画興行が変容するのは当然かもしれない。

[筆者紹介]

小西未来

小西未来(こにし・みらい)。1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を選考するハリウッド外国人記者協会(HFPA)に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開された。

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