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コラム:FROM HOLLYWOOD CAFE - 第288回

2017年12月4日更新 小西未来

ピクサー新作「リメンバー・ミー」、野心的な作風×成熟したテーマで気持ちのいい涙

画像1 (C)2017 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

ピクサーがメキシコの「死者の日」を題材にした新作を準備していると聞いたとき、ちょっとした不安を抱いたことを覚えている。死者の日とは家族や友人が集い、故人に思いを馳せるメキシコの祝日で、日本のお盆と近い。その雰囲気はずっと派手で陽気だけれど、この日を題材にする限り、死を描かざるを得なくなるし、不気味なガイコツを登場させなければならない。これまでにパーソナルなテーマを万人受けする映画に昇華させてきたピクサーでも、さすがに今回は難しいんじゃないだろうか、と思ったのだ。

でも、そんな不安は杞憂に終わった。「リメンバー・ミー」は、ピクサーの代表作に匹敵する傑作だったのだ。

「死者の日」にはさまざまな伝統行事や風習があるものの、たとえばクリスマスのような祝日と異なり、由来や伝説が存在しない。それを逆手にとって、リー・アンクリッチ監督(「トイ・ストーリー3」)は、メキシコの田舎町を舞台に共感できる物語をつくり上げた。主人公ミゲルは12歳のギター少年。伝説のミュージシャン、デラクルスのようになりたいと心から思っているものの、一族では音楽が固く禁じられてしまっている、という設定だ。

画像2 (C)2017 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

アメリカ国外を舞台にしていたり、強い動機を持ったアーティストが主人公だったり、憧れの存在がすでに他界していたりと、「リメンバー・ミー」はブラッド・バード監督によるピクサー映画「レミーのおいしいレストラン」(07)と共通点が少なくない。

ミゲルの前に立ちはだかるのは、何世代にもわたって守られてきた家族の掟だ。音楽には呪いの魔力があるとして、一族では代々禁止されているのだ。それでもミュージシャンになる夢を諦めきれないミゲルは、死者の日、ひょんなきっかけで死者の国に迷い込んでしまう。元の世界にもどろうと奔走するうちに、祖先を巡るミステリーを暴くことになるというというストーリーだ。行き先が「死者の国」の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」と言えるかもしれない。

人間味溢れるガイコツたちが暮らす魅惑的な死者の世界と、「アナと雪の女王」のロペス夫妻によるキャッチーな楽曲群、エンターテイメント性たっぷりのストーリー展開の根底にあるのは、家族の絆というありきたりだけれど、骨太なテーマだ。

画像3 (C)2017 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

監督主導でストーリーづくりが行われるピクサーにおいては、監督の人生体験がそのまま反映されることが多い。思えば「トイ・ストーリー」や「モンスターズ・インク」など初期のピクサー作品はいつも友情がテーマだった。かつては若手クリエイターだった彼らが、ときにぶつかり合いながらも、力を合わせて映画を作り上げていた経験が、少なからず影響を及ぼしていたに違いない。

その後、それぞれ家庭を築くと、自分の子どもに対して過保護になりすぎていたり(「ファインディング・ニモ」)、年ごろの娘の気持ちがわからなったり(「インサイド・ヘッド」)といった悩みがそのまま作品に反映されるようになる。アンクリッチ監督は前作「トイ・ストーリー3」で、巣立っていく子どもを見送る親の心境が描いたが、「リメンバー・ミー」で題材にしているのはさらにその先だ。

中年となったいまでは、親が老い、友人や親戚が他界することが珍しくなくなってしまった。だが、自分を取り巻くそうした現実をありのまま描くのではなく、ユーモラスで幻想的な感動作に昇華させたのが見事。かつてピクサーが持っていた野心的な作風に、成熟したテーマが加わって、お気に入りのピクサー映画ランキングの上位に食い込む大傑作。久しぶりに気持ちのいい涙を流させてもらった。

[筆者紹介]

小西未来

小西未来(こにし・みらい)。1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を選考するハリウッド外国人記者協会(HFPA)に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開を控える。

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