巨匠チャン・イーモウ監督最新作は、南京大虐殺を扱った超大作 : FROM HOLLYWOOD CAFE

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コラム:FROM HOLLYWOOD CAFE - 第160回

2011年11月24日更新 小西未来

第160回:巨匠チャン・イーモウ監督最新作は、南京大虐殺を扱った超大作

今回、ご紹介する「ザ・フラワーズ・オブ・ウォー(原題:金陵十三釵)」は、いまのところ日本での公開予定がない。中国の巨匠チャン・イーモウ監督の最新作で、クリスチャン・ベール渡部篤郎など国際色豊かなキャストで作られた超大作であるのになぜ配給が決まっていないかというと、南京大虐殺というデリケートな題材を描いているからだ。

でも、アカデミー賞外国語映画賞の中国代表として出品されることになっているし、これから話題になる可能性もあるから、ご紹介しておこうと思う。

舞台は1937年の南京。旧日本軍が侵攻し、逃げ場を失ったカトリック校の女生徒たちが安全地帯とされる教会に駆け込む。その後、流れ者のアメリカ人(ベール)や、売春街の娼婦たちが合流。地獄絵図となった外界から隔離された彼らは、反目し合いながらも、理解を深めていく。しかし、平穏な日々は長くは続かない。教会を取り囲まれ、来るべき死が不可避なものと悟ったとき、団結して決死の脱出計画を実行することになる――。

物語の設定上、当然のことながら、悪者は日本兵だ。彼らはおよそ考えられる限りの、あるいは想像を超える凶行に及ぶ。ハリウッド映画ではタブーとされる、女性や子供に対する残虐描写があるので、僕は何度となく目を伏せなくてはならなかった。

これを中国政府によるプロパガンダだと決めつけるのは簡単だし、実際、彼らにはその意図があるのかもしれない。でも、映画を見た限りでは、イーモウ監督の演出に悪意は感じなかった。

それは、渡部演じる長谷川大佐というキャラクターの存在が大きい。音楽を愛する教養人で、人道的な士官として描かれている。日本兵を邪悪で凶悪な存在として画一的に描くこともできたのに、あえて避けているのだ。また、美術監督に種田陽平氏を起用している。

ストーリーが良く出来ていて、とくに自己中心的な主人公が、少女たちとの交流を経て変貌していくプロセスがいい。ベールは通訳以外、誰も英語を話せない撮影環境のなか、土日も休まずにぶっ通しで働いたという。また、一億ドルとも言われる巨額の製作費がつぎ込まれているだけあって、アクションとスケール感はハリウッド大作に引けを取らない。

ただ、設定が設定だけに、普通の作品のように物語世界に没頭できなかったのも事実。上映中、これほど居心地の悪い思いをしたのは初めてかもしれない。

[筆者紹介]

小西未来

小西未来(こにし・みらい)。1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を選考するハリウッド外国人記者協会(HFPA)に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開を控える。

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