第118回:質にこだわった選考をした今年のエミー賞授賞式
今年もエミー賞授賞式が行われた。エミー賞といえば、米テレビ界で最高の権威だが、実は第61回となる今年はその存在意義が試されていた。アメリカでは3年連続で視聴率がダウンしており、今年この傾向に歯止めが利かなければ、エミー賞授賞式はケーブル局での中継に格下げされる可能性がある。そうなればさらなる視聴率のダウンは必至で、業界関係者や一部のテレビファンだけが注目するマイナーな賞になってしまう。
第61回エミー賞助演男優賞受賞「LOST」マイケル・エマーソンImages courtesy of the Academy
of Television Arts & Sciences,
Photography by Mathew Imaging[拡大画像]
視聴率低下の最大の要因は、ケーブル局の躍進だ。「マッドメン」や 「Breaking Bad」「ダメージ」といった受賞番組はすべてケーブル局での放送であり、「グレイズ・アナトミー」や「CSI:科学捜査班」といったネットワーク局のドラマと比較して視聴者数は10分の1程度に過ぎない。エミー賞では高視聴率ドラマが冷遇されているので、一般の視聴者は授賞式中継からチャンネルを変えてしまうのだ。この状況は、インディペンデント映画の隆盛によって、視聴率が下降しているアカデミー賞授賞式中継とまったく同じだ。
そんななか、今年の受賞結果に注目が集まったが、「マッドメン」の作品賞(ドラマ・シリーズ部門)をはじめ、主演男優賞ブライアン・クランクストン(「Breaking Bad」)や主演女優賞のグレン・クローズ(「ダメージ」)など、昨年と同じ受賞者が並んだ。
ただし、ネットワーク局のドラマからも、「LOST」のベンジャミン・ライナス役で知られるマイケル・エマーソン(ドラマ・シリーズ部門助演男優賞)や、「プッシング・デイジー/恋するパイメーカー」のクリスティン・チェノウェス(コメディ・シリーズ部門助演女優賞)が受賞しているので、エミー賞を選考するATAS会員がケーブル・ドラマを偏重しているというわけではなさそうだ。良質な作品を求めた結果、ケーブル・ドラマにより多く授賞することになった、と見るべきだろう。じっさい、ケーブルのほうが野心的で刺激的なドラマが多く、また、シーズンあたりの製作本数がネットワークの半数だから、クオリティも高い。こうした結果になるのは当然なのだ。
映画に関しても言えることだが、人気とクオリティは必ずしも比例しないものだ。ATAS会員が一時しのぎの人気者選びではなく、質にこだわった選考を行ったことで、エミー賞の権威は守られたように思う。また、サプライズの少ない受賞結果ながら、初司会のニール・パトリック・ハリスの活躍もあって、今年の視聴率はアップ。エミー賞授賞式中継のあり方を巡る議論は、来年に持ち越されることになった。
※【放送情報】海外ドラマ専門チャンネルAXNにて独占放送!
「第61回エミー賞授賞式」ノーカット完全版 【字幕版】11月6日(金)21:00〜23:30
