第113回:ピクサーのスタジオ訪問で映画さながらのキャンプ体験
カリフォルニア州エメリービルに構えられたピクサー社[拡大画像]今年もピクサー訪問の季節がやってきた。今回は、歴代10作目となる新作「カールじいさんの空飛ぶ家」の取材だ。ぼくが初めてピクサーを訪問したのが、4作目の「モンスターズ・インク」(01)のときだったから、なんと7度目ということになる。ピクサーといえば、コンスタントに良作を生み出す世界でも希有な映画スタジオとして知られ――ヒット率はいまだに100%を維持している――社内は活気に満ちているから、ピクサー詣ではいつでも刺激的だ。いまやぼくにとってお楽しみの年中行事となっている。
しかし、今回はちょっと趣向が違っていた。これまでのピクサー取材だと、社内見学をしてから、美術やアニメーションなど製作過程のデモを見たのちに、監督やプロデューサーにインタビューをする。でも、今回はホテルに迎えにきたバスから凝っていた。大量の風船で空を舞うという「カールじいさんの空飛ぶ家」の設定に合わせて、送迎バスには風船が詰め込まれていたのだ。そのバスでエミリービルにあるピクサー・アニメーション・スタジオに到着すると――さすがに空は飛べないので、普通にベイブリッジを横断した――社屋前の広場に通された。そこでは、お揃いスカーフを首に巻いたお兄さんやお姉さんたちが待ち構えていて、「Wilderness Explorerのキャンプへようこそ!」と歓迎してくれた。Wilderness Explorer(大自然探検団)とは、物語に登場する少年が所属している架空の青年団で、早い話がボーイスカウトだ(大人の事情で、「ボーイスカウト」と呼べないのだろう)。で、制服姿の人たちによれば、記者たちもボーイスカウト、いや、大自然探検団を半日体験しなければならないという。
お迎えのバスから映画の世界へご案内[拡大画像]戸惑う記者たちをよそに、「大自然探検団」の自称「シニアメンバー」たちは、イベント内容を紹介していく。ピクサー内では13のイベントが用意されており、ひとつのイベントを達成するごとにバッチをひとつもらえるルールだとか。一通り説明を終えると、リーダー格の男はまるで子供を相手にするかのように陽気に言い放った。
「さあ、誰が一番多くのバッチを集められるかな?」
おいおい、こっちは取材に来たのであって、キャンプごっこをやりにきたんじゃないんだぞ。シニアメンバーたち(実際は、この日のイベントのために雇われた役者たち)に文句のひとつでも言ってやろうかと思ったが、他の記者たちは意外に乗り気で、ぼくは一人取り残されてしまった。かくして不本意ながら、疑似キャンプに参加することになったのである。
取材記者たちもキャンプ体験に夢中に[拡大画像]風船を膨らませて犬の形を作ったり、影絵で遊んだり、芝生に寝転がって雲を眺めたり。はじめは、ゴールデンウィーク進行で忙しい最中にどうしてこんなことを、と愚痴をこぼしていたぼくも、いつのまにバッチ集めに夢中になっていた。とくに楽しかったのが、S'more作りだ。S'moreとは、火にあぶったマシュマロをチョコとクラッカーで挟んだキャンプの定番食だが、実際に食べるのはこれが初めてだった。インドア派のぼくにとって、こんな機会でもなければ一生体験することもなかったと思う。バッチをすべて集めた達成感も格別で、午後からのインタビュー取材に心地良く臨むことができた。
来年はどんなイベントが待っているか、いまから楽しみだ。
