日米バージョン連続上演の「キンキーブーツ」は映画以上に派手で感動的! : 若林ゆり 舞台.com

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コラム:若林ゆり 舞台.com - 第46回

2016年7月29日更新

第46回:日米バージョン連続上演の「キンキーブーツ」は映画以上に派手で感動的!

最近のブロードウェイは映画のミュージカル化作品が花盛り。なかでも「キンキーブーツ」は素晴らしい成功をおさめた大ヒット作。2013年のトニー賞で13部門にノミネートを果たし、作品賞など主要6部門を受賞。現在のブロードウェイでも熱狂的な人気を集めている作品の1つなのだ。

この大ヒットミュージカルが日本に上陸、日本人キャスト版と来日版が相次いで上演されるということで話題が沸騰中。先に開幕した日本版「キンキーブーツ」を観劇したが、この完成度が期待以上。日米のスタッフとキャストが時間をかけ、魂をかけて作り上げたことを感じさせる、ホンモノのエンタテインメントに仕上がっていた!

元になった映画は、2005年に製作されてイギリスでは社会現象級のヒットを飛ばした良質なハートフル・ドラマ。本当に心に響くいい作品だけれど、ちょっと地味だった。それをここまで華麗なショーとして成り立たせたのは、あのシンディ・ローパーによるポップなミュージカルナンバーによるところが大。しかしそれだけではなく、振付もセットも演出も、総合的によく練られ、非常によくできた作品なのである。筆者はブロードウェイでも見たが、その演出をそのまま踏襲した日本人キャスト版も遜色ない楽しさだ。

画像1 撮影:若林ゆり

イギリスの片田舎、ノーザンプトンの靴工場を継ぐことになった頼りない若社長のチャーリー(小池徹平)が、倒産寸前の工場を救うためにひらめいたアイデア。それはロンドンで出会ったローラ(三浦春馬)のようなごついドラァグクイーンの体重も支えられ、快適に履けるブーツを作ってニッチな市場を開拓しようというものだった!

幕開けは縦長に組まれた2階建てセットを使って靴工場へと誘い、さらにチャーリーとローラ、それぞれの幼少時代がスケッチされる。この場面が後々「効く」のだ。必要な説明を過不足なく、スピーディにわかりやすく入れ込む演出の妙。ブロードウェイより舞台が大きくなった分、スケールアップしているような気もしてワクワクした。

しかし、正直に言うと日本版キャストを聞いたとき、三浦春馬のローラはミスキャストなんじゃないか、という気がしていた。地球ゴージャスの舞台で歌えるのは知っていたが、線が細すぎじゃないかと思ったのだ。なんたってローラは、一時は格闘技を極めた筋肉美のオカマさん。映画で演じていたのもごついキウェテル・イジョフォーだ。三浦では普通に女装が似合ってしまい、「なりたい自分」とギャップがあるローラの「哀愁」が出せないのではないか? これが、杞憂だった。

画像2 撮影:若林ゆり

初日直前の会見で小池が「この春馬の変わりっぷりに観客のみなさんも驚かれるんじゃないかな」と言っていたが、その通りだ。開幕から10分以上経って現れた三浦ローラは、ビックリするほど太くたくましい上腕二頭筋を露わにしたミニスカドレス姿できゅっと持ち上がった臀部をくねらせながら、10センチはあろうかというヒール靴で妖艶に歌う、キレッキレに踊る。堂々たるそのドラァグクイーンぶりに魅せられまくりである。それもそのはず、三浦は2013年にブロードウェイで本作を観劇して以来、「もし日本で公演することがあったらローラ役をやりたい」と念じていたという。まさにドリーム・カム・トゥルー。それだけにめいっぱい気合いを入れた三浦は、ニューヨークに1カ月滞在してシンディ・ローパーと同じボイストレーナーに歌唱指導を受けたり、ジムに通うなどして準備したそう。その成果を見てほしい!

しかし1つだけ注文したい。メイクを何とかして! これは三浦の責任ばかりではないのだが、「40分くらいかかる」のに綺麗に見えないのは大問題。美にこだわり抜いているローラだけに、残念すぎるのだ。

話題はついつい三浦ローラにさらわれがちだけれど、チャーリー役の小池徹平も実にアメージングな仕上がりだ。ミュージカル版「デスノート」のL(エル)役で「できる!」と唸らせ、帝劇のフレンチ・ミュージカル「1789」の主演を経験した小池は、舞台人として驚異の成長を遂げている。伸びのある歌声とメリハリのある演技で、大舞台の芯としての求心力を発揮する姿は圧倒的だ。それに、大人の男性に対して失礼ながら、小池はかわいい。困難にぶち当たったとき「ほっとけない」と思わせるチャーリーにぴったりなのだ。彼と、「それぞれのたいへんさを分かち合い、ともに乗り越えてきたことで築き上げた関係性がある」と言う三浦との化学反応が、この舞台の最大のお楽しみだ。

画像3 撮影:若林ゆり

さらに、「1789」では小池の妹役だったが今度は恋のお相手ローレン役のソニン、迫力満点の歌と踊りで作品を盛り上げるローラの仲間たち「Angels」ら、脇も充実。ギンギラしたセットやベルトコンベアーを使ったド派手なダンスナンバーと、人と人とが心を通わせる繊細かつ人情味あふれるシーンとの緩急が確実に機能。「自分とは違う他人を受け入れ、自分を受け入れば世界を変えられる」という素晴らしいテーマに心を震わされずにはいられない。やっぱり字幕を読まなくていい、日本語で歌ってくれると、歌詞の届き方が違うのだ。そしてラストは胸いっぱい。元気と勇気をチャージして、心が躍り出す! ミュージカルが苦手という人でも絶対に楽しめてしまうこの作品、クセになったらぜひ、来日版と見比べてみてほしい。

次ページではオリジナルの演出家、ジェリー・ミッチェルにインタビュー!

ブロードウェイミュージカル「キンキーブーツ」〈日本版〉は8月6日まで新国立劇場 中劇場で、8月13~22日 大阪オリックス劇場で、8月28~9月4日 東急シアターオーブで上演される。詳しい情報は公式サイトへ。
 http://www.kinkyboots.jp/home/

[筆者紹介]

若林ゆり

若林ゆり(わかばやし・ゆり)。映画ジャーナリスト。タランティーノとはマブダチ。「ブラピ」の通称を発明した張本人でもある。「BRUTUS」「GINZA」「ぴあ」等で執筆中。

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