北野武がタップの師匠、HIDEBOHのために温めていた企画が舞台に登場! : 若林ゆり 舞台.com (2)

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コラム:若林ゆり 舞台.com - 第37回

2015年11月2日更新

第37回:北野武がタップの師匠、HIDEBOHのために温めていた企画が舞台に登場!

TamangoとHIDEBOHは25年間、決して密な関係を保ち続けていたわけではない。しかしタップを通して、人生の節目で何かが共鳴し合った。

「ニューヨークで最初に出会ったころ、僕とHIDEBOHはロン・チェイニー、ジミー・スライダー、チャック・グリーンといった、まさにサムライみたいなタップ・マスター、オリジナル・フーファーズに師事していたんだ。『タップ』という映画にも出ていたレジェンドたちなんだけど、僕たちは彼らの息子なんだよ。同じスピリットが流れている。彼が帰国してからはしばらく会っていなかったけど、忘れたことはなかった。それから長い時間が経って、3度目に来日したときやっと再会できたんだ。彼は誕生日パーティーをやっていて、『君も来いよ』って誘ってくれた。そのとき、僕の中で何かが起こった。僕はちょっと迷っていた時期だったんだけど、彼が救ってくれたんだ。HIDEBOHは『いつか一緒に何かやろうよ』って言ってくれて、僕は『まあきっといつかね』って軽く答えておいたよ(笑)。それからまた時が流れて、ある日、HIDEBOHが『日本に来て僕と一緒に仕事をしよう』って言った。そりゃいつかはって思ってたけど、まさか実現するなんて『ワーオ、ホント?』って感じだったよ(笑)。いまでも信じられないくらいさ!」

画像1 撮影:若林ゆり

Tamangoから見たタップダンサーとしてのHIDEBOHは「彼自身のサウンドを持った本物」だという。

「彼はすごくすごく希な、即興の重要性を身をもって知っているダンサーだ。彼がやっているダンスは、彼そのものを感じさせるものだよ。目をつぶって音を聞いただけで、彼のダンスだってすぐにわかる。多くのダンサーは自分の音を持ってはいない。テクニックはあってもね。ほかの人が作ったものをただうまく踊っているだけで、自分自身の踊りではないんだ」

舞台ではTamango扮するビルが、HIDEBOH演じる森山をブロードウェイに紹介するという場面がある。HIDEBOHによれば、Tamangoとの関係が作品の中で逆転し「パラドックス的なもの」が生まれているのだという。

「昔、僕をニューヨークの舞台に上げてくれたのがTamangoだったんです。世話になったけど、厳しいことも言われましたよ。『モノマネロボットでしかないなら帰った方がいい』とか。『日本のよさを早く見せてくれよ。なんで肌を黒く焼いて髪をドレッドにしてるんだ、黒人でもないのに意味わかんないな』とかケチョンケチョン (笑)。友達だから言ってくれたんですよね。そのころの僕のルックスはまるで黒人。でも、猿まねしててもダメだって気づいたんです。親父とお袋もエンタテインメントっていうのはアイデアだということをずっと言っていた世代なので、日本に帰ってからは和太鼓とコラボだとか、灯油の缶を叩いてタップとやってみようとか。そういうチャレンジをいろいろしていくなかで武さんが見に来てくれて、『面白いことやってんな』って言ってくださった。跳躍力もリズム感も勝る黒人に日本人が勝つにはどうしたらいいんだって考えて、『ちょっと待てよ、“間”っていうのがあんまり黒人にはないな』とか。日本人気質である自分の得意技を生かして戦ったらオリジナルスタイルになるんじゃないかと。そう考えたことがいまにつながっているんだと思います」

画像2 撮影:若林ゆり

Tamangoとのエモーショナルな化学反応が、舞台にどう反映されるのかは大きな見もの。また、映画用だったシノプシスが舞台となって、タップの魅力をライブで存分に味わわせてくれるのも楽しみだ。これが成功すれば、今度はオフ・ブロードウェイ公演や映画化にもつながるかもしれない。

「僕はずっと映画を撮りたいという夢を持っているんです。だから映画でこれをやる夢もありますけど、まずは舞台を成功させないと。映画には映画のよさがありますが、劇場に来てくださるお客さんにナマで楽しんでもらえるのはうれしいですね。博品館劇場は、響きがそのまま客席に届く。後ろの席でも『遠くで何かやってるな』というのではなく、近くに感じられる大きさなので大好きな劇場なんですよ。だから、日本のオフ・ブロードウェイ的な舞台にちゃんとなれば。たとえば『STOMP』でも『ブルーマン』でも、『あそこで面白いのやってるぞ』という口コミから広がっていったでしょう。これも同じように、歴史に残る名作にしなきゃなと思っています」

「海に響く軍靴」は10月30~11月15日、銀座・博品館劇場で上演される。詳しい情報は公式サイトへ。

http://theater.hakuhinkan.co.jp/pr_2015_10_30.html

[筆者紹介]

若林ゆり

若林ゆり(わかばやし・ゆり)。映画ジャーナリスト。タランティーノとはマブダチ。「ブラピ」の通称を発明した張本人でもある。「BRUTUS」「GINZA」「ぴあ」等で執筆中。

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