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コラム:若林ゆり 舞台.com - 第16回

2014年10月7日更新

第16回:たった50席の小劇場で熱い男たちが心をわしづかみにする「六悪党」は幕末版「レザボア・ドッグス」なのだ!

小劇場というのは、演劇ファンであってもなかなかにハードルの高い娯楽なのではないか。面白い劇団やユニットは、噂を聞いたときにはもうチケットの入手が困難なことも多いし。舞台と役者が至近距離だと、好みに合わない演目だったりしたらかなりの苦痛を強いられることになるし。尻込みするのも無理はない。でも、もしハマれる芝居に出会えたらサイコーだ。だってライブの魅力は小劇場のほうがより濃く味わえるものだから。

というわけで、有名どころ以外ではなかなか映画ファンにオススメしたい作品にめぐり会えない(会えてもすでに遅い)ものなのだが、会えました、久々に。それが、下高井戸のHTSという小さな劇場でまさに上演中の「六悪党」。見てびっくり。なんたってこれ、幕末版「レザボア・ドッグス」なのだ!

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「六悪党」の戯曲は、96年に演劇集団THE・ガジラを主宰する鐘下辰男が、幕末もののシリーズ“ワンス・アポン・ア・タイム・イン・京都”の一編として執筆・演出したもの。最近も劇団EXILEや*pnish*に再演されている名作だ。

幕開けからラストまで、ストーリーの展開と構成は、「レザボア・ドッグス」をそのままいただいている。ただ、時代が違えばキャラクターも違う。ときは幕末、登場人物は土佐勤王党の党士たち。吉田東洋暗殺事件がモデルだろう。土佐藩には同じ武士でも、上士と鄕士という身分の差がある。鄕士ゆえにもどかしい思いをしながらも国の将来を憂え、一石を投じようという男たち6人が集まり、藩の要人暗殺を企てる。そして次の場面では、計画が失敗したことが見て取れる。1人は瀕死。もう1人が言う。「この中に間者がいるぞ!」。緊迫感の中、激しい感情がやりとりされ、フラッシュバックでそれぞれの関係性、思惑、立場がだんだんと立ち現れてくる。はたして、間者は誰なのか。彼らは生き残り、志をまっとうすることができるのか……?

某劇団の稽古場でもあるという劇場は、木張りの廊下を両側から囲むような客席がわずか50席。いやーもう、これが興奮せずにいられようか。素晴らしい面構えの個性豊かな若手俳優たちが発散する熱、侠気、友情、思慕、憎しみ、軽蔑、野心、叫び、劣等感に優越感……。彼らは流行歌にまつわるヨタ話などしない。つねに真剣勝負。武士としての矜恃にすべてを賭けて、闘うしかない男たちの激烈な哀歌に心は釘付けだ。しかもみんながふんどし一丁になる相撲シーンなんかもあったりして眼福! もちろん感心するのはそこではなくて。単に「レザボア」をパロったのでも真似たのでもなく、換骨奪胎して素晴らしい作品に仕上げているところなのである。何より人間が描けている。

撮影:若林ゆり 撮影:若林ゆり

今回、プロデュース、演出、主演を兼ねてこれに挑んだのは、役者として10年目を迎えた山﨑雄介。鴻上尚史率いる「虚構の劇団」を退団した彼は、同じ劇団の仲間だった陽永(こちらはいまも団員)とユニット「トライヲンズ」を結成。これが旗揚げ公演となる。フラッシュバックでことの起こりを語ってもらおう。

「8年前に、まだデビューして間もなかった僕がtpt(theater project tokyo)のプロデュース公演『スラブボーイズ』に出させていただいて、それが演出家・千葉哲也さんとの出会いだったんです」と、山﨑。そのとき「男だけでできる男臭い芝居がやりたい」と、THE・ガジラの看板俳優でもあった千葉に相談したのがきっかけだそうだ。「そのとき、こんなのがあるよとこの作品の台本を読ませてくださって。それからずっとやりたいと思ってきた。やっと機が熟したという感じですね」。

[筆者紹介]

若林ゆり

若林ゆり(わかばやし・ゆり)。映画ジャーナリスト。タランティーノとはマブダチ。「ブラピ」の通称を発明した張本人でもある。「BRUTUS」「GINZA」「ぴあ」等で執筆中。

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