「潜水服は蝶の夢を見る」のアカデミー賞受賞脚本家が語る製作秘話
脚色を手がけたマイク・ニューウェル監督「Love in the
Time of Cholera」の上映会で同監督と。左がハーウッド
[ロンドン 4日 ロイター] 全身麻痺の男の物語を脚色することを一度は断念しかけた脚本家のロナルド・ハーウッドは、諦めなくてよかったと今しみじみ思っていることだろう。南アフリカからイギリスに移住したのち舞台や映画の世界で幅広く活躍し、ロマン・ポランスキー監督の「戦場のピアニスト」でアカデミー脚色賞を受賞した73歳のハーウッドは、「潜水服は蝶の夢を見る」で再び同賞にノミネートされた。
同名の原作は、仏版エル誌の編集長だったジャン=ドミニク・ボビーの自伝。ある日突然脳梗塞で倒れ、全身麻痺に陥ったボビーが、唯一動かせる左目の瞬きだけで綴った驚異の実話だ。
「今回のオファーを受ける以前、5年ほど前に原作を読んですばらしい本だと思っていた」と、4日にロサンゼルスで行われたアカデミー賞候補者昼食会に出席するため訪米中のハーウッドは語った。「だから映画化に際して脚色の依頼を受けたとき、再読もせずに引き受けた。馬鹿なことをしたもんだよ。いざ始めてみたら、どうやって進めていいものかまったく分からなくなってしまったんだ」
だが、進まない作業に幾度かのパニック発作に見舞われながらも、ある時ハーウッドはひらめいたのだという。「この仕事から降りたいという言葉が喉まで出かかった時だった。映画をボビーの視点で描いて、カメラを彼の左目に見立てればいいと思いついたんだ」。そしてハーウッドは、ボビーの思考をナレーションで伝える手法を選択した。
「そこからはもう、語るべき物語が見えてきた――病いと類いまれな想像力の物語だよ」。そう言うハーウッドは、しかしこうつけ加えることも忘れなかった。「だけどこれまで手がけた脚本の中で最大の難物だったことだけは間違いないね」



